銀行家は、合併などの投資銀行案件が乏しい状況が続いていることについて語る時、庭師に変わることが多い。再び成長すると期待できる兆しとして、こちらでは買収という形で、あちらでは新規株式公開(IPO)という形で「萌芽(ほうが)」が見られると指摘するのだ。だが、この例えは今の世界には微妙すぎるかもしれない。経済は低成長が見込まれ、米国債利回りは急上昇し、イスラエルとウクライナは紛争の渦中にあるなど、リスクは土壌が乾き気味というだけにとどまらない。干からびた地面に亀裂が入り、一時的な小康状態と言われたりするものが、何年も続くものに変わってしまう恐れがあるのだ。直近の決算は悲惨の極致というわけではない。米金融大手のバンク・オブ・アメリカ、シティグループ、ゴールドマン・サックス、JPモルガン・チェース、モルガン・スタンレーの7-9月期(第3四半期)決算では、投資銀行部門のMA(合併・買収)アドバイザリー事業および株式・債券募集事業の総収入が、2021年の四半期ピークの半分未満となった。それでも、4-6月期(第2四半期)からは7%増加し、全体では前年同期比で2%の減少にとどまった。
苦境の米投資銀、注目すべきは「多年草」
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