ゼネコン大手の大成建設は、札幌市中心部で建設中の大型複合ビルで、現場担当者が数値を改ざんして、施主側に虚偽の数値を報告していたと明らかにした。ビルは法令基準を満たさない恐れがあり、建て直しという異例の事態となった。前代未聞の不祥事はスーパーゼネコンの序列激変につながる可能性がある。大成建設を襲う二つの「最悪シナリオ」を解説する。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)
建て直しで28カ月の竣工遅れ
地に落ちた大成建設の信頼
大成建設による施工不良があったのは、NTT都市開発が札幌市中央区で開発する地上26階、地下2階の鉄骨造り、鉄骨鉄筋コンクリート造りの大型複合ビル。このビルには店舗やオフィス、外資系ホテルチェーンの米ハイアットホテルズが入居する計画だ。
大成建設によると、大成建設は今年1月、施主であるNTT都市開発側から、鉄骨の組み立てに使用するボルトの大きさが設計と異なるとの指摘を受けた。
その後大成建設側が詳しく調べたところ、鉄骨を使用した柱や梁722カ所のうち70カ所で、平均4ミリ、最大21ミリのずれがあった。さらに床や天井のコンクリートの厚さが、570カ所のうち245カ所で規定より平均6ミリ、最大14ミリ薄かった。
これに関連し、大成建設で品質管理を担当する工事課長代理が、鉄骨の傾きやゆがみに関する計測値を改ざんして報告していたことが発覚したのだ。この工事課長代理は「工期の遅れを恐れ、(品質基準を超える)数ミリ程度の精度不良なら問題ないと考えた」と説明しているという。
工事は全体の2割まで進捗していたが、契約に基づく品質や法令基準を満たさなくなる可能性があり、地上部のすべてと地下部の一部を解体した上で、工事をやり直すこととなった。これにより、複合ビルの竣工は、当初の2024年2月から28カ月遅れの26年6月末にずれ込む見通しだ。
施工不良による工事やり直しという前代未聞の事態を受け、大成建設は建築部門トップの寺本剛啓取締役専務執行役員、札幌支店長の平島信一常務執行役員が3月31日付で引責辞任する。
大成建設は「本件事態の重大さを痛感するとともに、二度と同様の事態を起こさぬよう信用・信頼の回復に全力を尽くしてまいる所存です」とコメントしている。
大成建設が地に落ちた信頼を回復するのは、極めて険しい道のりになる。さらに、今回の施工不良が大成建設の業績に与えるインパクトは、甚大なものになる見通しだ。
同社によると、札幌の事例と同様の施工不良は、他の現場では確認されていないという。
売上高1兆円を超えるスーパーゼネコンは鹿島、大林組、大成建設、清水建設、竹中工務店の5社。3番手につけている大成建設はその座から陥落する危機に立たされている。
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