日中の活動量が増えてくると疲れが優って眠れるようになるが、それでも眠れない・寝たくない子に、Aさんは「寝なくてもいいよ」「その代わり、眠たい子もいるから静かにしていようね」「お布団にごろんしていたら、手と足が充電できてまた遊べるよ」といった声掛けをする。そのうち大体みんな寝てしまうらしいが、それでもどうしても寝られず、泣く・暴れるなどで他の子の睡眠を妨げてしまう場合は、部屋を変えるなどして個別に対応することもあるそうである。

 Aさんの話を聞いていると、園と保育士は園児のことを第一に慮って、「ハラスメント」には当たらない良識の範囲内でお昼寝に取り組んでいるように感じられる。しかしこれがたとえば、保育士が「寝ない子は悪い子」と叱ったりするとグレーな領域に入り、寝ない子を別室にひとりで閉じ込めたりすれば、まごうことなきお昼寝ハラスメントか不適切保育であろう。

 そうでなく、Aさんが感じているように「お昼寝を好きな子は少ない」のなら、「保育所保育指針に“午睡”を含めること自体がすでにお昼寝ハラスメントに当たる」という考え方も成立する。子どもの自主性を重んじるなら、子どもが嫌がるであろうお昼寝は最初から設定すべきではない。

 実は、この「子どもの自主性」なる概念が非常に取り扱いが難しく、日本中がどう解釈するか頭を悩ませ、また「こうだろう」「いやそうじゃない」と議論される対象となっている。

「お昼寝が嫌」に見る
社会性と自主性のバランス

 ちょうど筆者の5歳の娘が、「お昼寝の時間寝られないから保育園に行きたくない」と言い始めた。慎重に聞き取りを進めていくと、裏の理由はなく本当に言葉通りだったので、担任の保育士さんにも相談し、寝かしつけにトントンしてもらうようにしてもらって、我が家では起きる時間を1時間早めたら、幸運にもちゃんとお昼寝できるようになった。