円安と資源や食料価格の上昇はいつまで続くのか
当面の世界経済の展開を予想すると、エネルギー資源、小麦やトウモロコシ、牛肉などの食料・肥料といったモノ・サービスの価格が上昇する可能性は高い。また、為替介入や日本銀行の金融政策の調整などによって円売り圧力が鈍化することはあったとしても、基調として円は、主要通貨に対して弱含みの展開になるだろう。
米国では物価再上昇の兆しが出始めている。要因は一つではないが、原油価格の上昇は大きい。23年末までサウジアラビアは日量100万バレルの追加減産を続ける。米国では原油価格上昇を反映してガソリン価格が上昇しているし、家賃も高止まりしている。インフレ懸念が再度、高まりつつある。
さらにイスラエルとハマスの戦闘が勃発したことで、イランはイスラエル向けの石油禁輸を産油国に呼びかけている。中東情勢の緊迫化は、世界の原油相場に上昇圧力をかける恐れが高い。
干ばつや肥料価格の上昇を背景に牛肉の価格も上昇している。世界的に人手不足は深刻で、ストライキの増加を背景に、物流コストにも押し上げ圧力がかかる。インフレ懸念は追加的に高まっている。
また、円はドルなどに対して弱含みを続ける可能性も高い。米国以外の主要国の経済は、コロナ禍以前の状態に完全に回復したとは言いづらい。わが国の景気回復は、米国に対して“周回遅れというべき状況”との見方もある。
他方、「日銀が長期金利の上限を引き上げる」「24年4月までにマイナス金利政策を解除する」などの予想は増えているが、異次元緩和の正常化には相応の時間がかかる。過度な円安を抑えるための為替介入の効果は、一時的だ。米国経済は徐々に減速に向かうだろうが、インフレ懸念の再燃を背景に、FRBによる早期の利下げは難しいだろう。
中長期的に見ると、円に減価圧力はかかりやすい。そして、エネルギー資源や穀物などに関して日本企業が海外企業に“買い負ける”ケースも増えるだろう。輸入物価の押し上げ圧力は簡単には解消されず、わが国の購買力は追加的に低下しそうだ。