『「上級国民/下級国民」はどの世代?橘玲氏に聞く団塊、バブル、氷河期、ゆとり…割を食うのは誰だ』に続き、ベストセラー作家の橘玲氏が、日本の社会が直面している世代間格差の問題点について指摘する。特集『どの世代が損をしたか?氷河期部長&課長の憂鬱 出世・給料・役職定年』の#16では、ダイヤモンド編集部の取材で判明した、キリングループの年齢別社員数グラフを題材にして、団塊の世代・バブル期入社組とゆとり世代の間で板挟みになっている、就職氷河期世代の惨状を解き明かした。(ダイヤモンド編集部編集委員 清水理裕)
団塊の雇用は守られる一方
全てのしわ寄せが氷河期世代に
インタビュー(1)では、財政的に維持困難になっている社会保障制度に関して、「圧倒的に人数が多い団塊の世代の死活問題であり、誰も抜本的に手が付けられなくなっている」と鋭く指摘した橘玲氏。今回はさらに突っ込んで、就職氷河期世代が味わってきた苦難やゆとり世代が優遇されている理由について聞いてみた。
――世代論になると、団塊の世代の存在感は、すごく大きいですね。
その通りです。それだけに、彼らの生活は手厚く守られてきました。この層の家計が破綻するようなことになれば社会が土台から崩壊するという恐怖を、為政者は感じていたはずです。実際、バブル崩壊後、政府は巨額の公的資金を投入し、なりふり構わず景気を下支えしました。
1990年代から大企業はリストラに血眼になり、小泉政権の新自由主義的な改革も加わって雇用破壊で正社員が減り、非正規社員が急激に増えた――。こういう通説があります。
しかし、正社員、非正規、自営業、パート・アルバイト、無業者それぞれの割合について、82~2007年の推移を見ると、90年代末の金融危機で日本経済が大打撃を受けたにもかかわらず、実は正社員の就労状況が極めて安定していたことが分かります。
つまり、当時中高年だった団塊の世代の雇用は、しっかり守られていた。年功序列や終身雇用の日本型雇用慣行も、彼らの既得権として温存されました。
――ただ、実際この時期に非正規は増えています。
団塊の世代を守るために、あおりを受けて割を食ったのが就職氷河期世代です。この世代に含まれる団塊ジュニアは人数も多く、とてもではないが全員を正社員として雇用することはできない。
例えば、22~29歳の男性の働き方の推移を追うと、92年に77%だった正社員の割合は07年には62%に低下。一方、賃金の低い非正規は5%から15%に、無業者も10%から16%に増えています。成人しても実家で暮らす「パラサイトシングル」という言葉が生まれたのも、90年代末のことでした。
学校を卒業して非正規や無業者になった若者たちはロスジェネ(失われた世代)と呼ばれました。彼らが将来、貧困層として生活保護に流れ込んできたら、制度はとうてい維持できません。みんなうすうす気付いていますが、そのことを言いだすと絶望しかないから見て見ぬふり。これが日本の現状ではないでしょうか。
――一企業の例ですが、ダイヤモンド編集部の取材で明らかになった、キリングループの年齢別人口グラフ(次ページ図参照)は、氷河期世代がごっそり抜けていました。