能力が同じでも、それを活かせる子と活かせない子がいる
勉強ができるようになりたいというとき、まず頭に浮かぶのは学校の成績だ。でも、成績というのは学んだ成果をあらわすものにすぎない。成績の背後で働き、それを大きく左右するのが学ぶ力である。いわば、成績を生み出す元になる力だ。
勉強ができるようになるために大切なのは、この学ぶ力をしっかりと身につけることである。学ぶ力が身につけば、学んだ成果としての成績も自然に上がっていく。
このように言うと、「それって知能のことでしょ。知能は遺伝で決まってるんだから、今さらそれが大事だなんて言われても困るよ。自分にはどうにもできないんだから」などと言う人もいる。でも、その考え方は二つの意味で間違っている。
まず第一点として、知能に遺伝要因が深く関係しているのは否定できないが、最新の研究データをみても、知能には遺伝要因と環境要因がほぼ半々の割合で関与していることがわかっている。つまり、知能の五割は遺伝要因で決まっても、残りの五割は環境要因で決まっていく。ということは、自分にはどうにもできないものなどではないのである。
さらに第二の点として、知能がそのまま学業成績に直結しているわけではないということがある。知能が高いのに学力がそれほど高くない子がいるが、それをアンダーアチーバーという。その反対に、知能はそれほど高くないのに学力が高い子もいて、それをオーバーアチーバーという。勉強ができるかどうかは知能の問題だと思われがちだが、アンダーアチーバーやオーバーアチーバーがいること自体、知能が学業成績にそのままつながるわけではないことを示している。
そこで浮上してくるのが、学ぶ力の重要性である。学ぶ力を身につければ潜在能力を十分発揮できるけれども、学ぶ力が身についていないと潜在能力の大部分が埋もれたままになってしまう。では、学ぶ力というのは、具体的にどのようなものなのだろうか。それを認知能力、非認知能力、メタ認知能力という三つの側面から考えていきたい。