ChatGPTを開発し、現在の生成AIブームを起こした米国のベンチャー企業、OpenAI。今月、そのOpenAIの創業者であり、ChatGPTを生み出したサム・アルトマンCEOが、突然、理事会(企業の取締役会に相当)から解任されるという“事件”があった。OpenAIを追われたアルトマンはマイクロソフトに入社するとX(旧Twitter)に投稿したが、その後1週間足らずでCEOに復帰することになった。シリコンバレーだけでなく世界が驚いたこの事態。いったい何が起きたのか?なぜアルトマンは自分の会社を追われる事態になったのか?経緯と背景を解説する。(テクノロジージャーナリスト 吉田拓史)
11月中旬の金曜日、突然OpenAIのCEOが解雇された
まず、一連の騒動全体の流れを大まかにまとめてみよう。
11月17日、OpenAIの理事会は、共同設立者兼CEOのサム・アルトマンの解任を発表した。18~19日は週末だったが、マイクロソフトは素早く動き、アルトマンと研究者の95%を迎えると明らかにした。そしてOpenAIの従業員700人以上が、アルトマンを再度迎え入れ、追放を画策した理事が退任しない場合は辞職し、マイクロソフトに合流すると宣言した。
Sam and I are shocked and saddened by what the board did today.
— Greg Brockman (@gdb) November 18, 2023
Let us first say thank you to all the incredible people who we have worked with at OpenAI, our customers, our investors, and all of those who have been reaching out.
We too are still trying to figure out exactly…
解任発表後から、社内では権力闘争が絶え間なく続いていた。理事会は、動画配信サービスTwitchの元CEOのエメット・シアーを暫定CEOに据えた。AIがもたらす人類存亡の危機に対するシアーの懸念と、Twitch在籍時に大規模なエンジニアリング・グループを率いた彼の経験が選出の理由だった。しかし、サンフランシスコ本社の従業員は、シアーとの緊急会議に出席することを拒否した。
これに対し、アルトマンはマイクロソフトへの退路を確保しながら、従業員、OpenAIの投資家たちの後押しを受け、理事会と再交渉。最終的に21日、自身の復帰と追放を画策した理事を追い出すことに成功した。
一時はマイクロソフトが、アルトマンとOpenAIの研究者たちをそっくりそのまま獲得しつつあり、漁夫の利の様相だった。OpenAIへの投資によって、本来乗り遅れていたAIの波を捉えたサティア・ナデラCEOが、さらにOpenAIから成果を引き出しそうだということで、その辣腕(らつわん)が称賛された。