次世代AI「Qスター」は汎用人工知能になるかもしれない

 直近では、高性能な次世代AIが誕生し、理事会が危機感を募らせたことが、理事会に放逐を決意させたといわれる。次世代AIとは、人間のように、あるいは人間の能力を超えて、主体的に学習し、理解する「汎用人工知能」(AGI)のことだ。アルトマンはAGIについても急進主義だった。

 この件を最初に報じたロイターによると、OpenAIの幹部であるミラ・ムラティCTOは22日に、「Q*」(Qスター)と呼ばれる画期的なAIが開発されたことを警告する書簡が理事会の行動を促した、と従業員に語ったとされる。「膨大なコンピューティングリソースを与えられた新しいモデルは、特定の数学的問題を解くことができた。小学生レベルの数学しか解けなかったが、このようなテストに合格したことで、研究者たちは『Qスター』の将来の成功を非常に楽観視するようになった」とロイターは関係者談話を引用している。

 本稿執筆時の25日時点で、AIコミュニティーの中でこのQスターを巡る探偵ごっこが行われている最中だ。最も有力に見える憶測(あくまで憶測)では、QスターはChatGPTを動かしている言語モデルを採用せず、主体が試行錯誤を繰り返しながら報酬の最大化を目指す強化学習と呼ばれる手法を使っているという。囲碁の世界王者を完封したアルファ碁や、あらゆるリアルタイム戦略ゲームで人間のプロゲーマーを倒したアルファスターの系譜にあるものとされる。

 このアルファ碁などは、GoogleのAI研究所Deep Mindが作ったものであり、同研究所はこの強化学習の手法で数々の功績を遂げている。Qスターがどのくらいすごいのかは分からない。もしかしたらブラフかもしれない。AGIと呼べるものになるかも分からない。ただ、OpenAIがこの分野でブレークスルーを遂げたとすれば、AI競争がさらなる高みへと向かうことは間違いない。