そして、1.4兆円以上の評価がついているGitLabの上場は、DevOpsや開発者向けのSaaSが高い注目を集めるきっかけになったと思います。「市場が小さい」と懸念されていたこの分野のSaaSに1兆円以上の評価額がついたのは、テクノロジー企業の増加、デベロッパーコミュニティーが拡大していることの証明となり、この分野で新たな波が起きる可能性があると期待しています。

2022年の投資環境の変化や注目領域・プロダクトについて

「FinTech×SaaS」は、注目度の高い分野だと感じています。SaaSはデータとワークフローの両方を押さえていることが多く、FinTechとの相性がとても良いのです。ユーザーの利便性を高めながら、マネタイズポイントを新たに構築してARPA(1アカウントあたりの平均売上金額)を高めることができるので、まさにWin-Winな状況です。

北米のECプラットフォーム・ShopifyのFinTech事業は、四半期の流通総額が2兆円を超え、年度成長率も50%近くあり勢いを見せています。従来SaaSの収益化モデルといえばサブスクリプションが基本でしたが、手数料や従量制を採用する“マネタイズの多様化”が進んでいると言えるでしょう。

2022年に注目すべき投資先

hacomono:独自性が高いポジショニングを取れている。

ログラス:非常にレベルの高いプロダクトチームによって構築されたSaaS。

カミナシ:ノンデスクワーカー向けにSaaSを展開していて、大手チェーンなどの導入が次々と決まっている。

WiL パートナー 難波俊充

2021年のスタートアップシーン・投資環境について

100億円前後の資金調達をするスタートアップが複数登場したのが印象的な1年でした。私たち投資家にも海外投資家からの問い合わせが段違いに増え、優れた会社には投資家が列をなして、調達枠を取り合うような状況が発生しています。

一方で、こうしたトレンドに接することができているのは、まだ限られたスタートアップに止まっており、2022年以降はこれをよりスタンダードにしていくのが私たちVCの1つの役割となると思っています。

海外投資家の目に止まりやすいスタートアップの傾向は──①グローバルに見てわかりやすい事業ドメインであること、②T2D3の成長軌道にしっかり乗っておりARR(年間経常収益)20億円を越えるようなフェーズを迎えていること、③経営陣の中に英語でコミュニケーションができる人材がいること──などです。

マクロ的に日本市場に注目が集まった理由は、米国と比較して国内のSaaS/DX率がまだ低く成長余力があること、リスクマネーが少ないためスタートアップの競争環境が少ないこと、海外スタートアップの価格高騰から投資家として相対的に割安に見えることが挙げられます。