残念な点は日本市場について詳しい海外投資家はまだごく一部であるために、KPIや海外で類似企業が成功しているなどポジショニングの分かりやすいスタートアップが好まれることです。

日本からイノベーティブなスタートアップを輩出するために、どんな事業ドメインであれユニコーン級のスタートアップを国内で育む力をもっと強化したいです。その上で海外投資家をも魅了し、時間を経て日本固有の環境を理解する投資家をグローバルに増えやしていけるといいなと思います。

国内に限らずグローバルの資金調達環境も活況でした。Tiger Globalの新しい投資戦略にも注目が集まりましたが、ユニコーン企業はこの勢いだと1000社を越える勢いで増えています。

WiLの投資先は現在11社がユニコーン企業で、それらのファイナンスでもダイナミックな動きがありました。クロスボーダー送金のWiseには2017年ユニコーンになった直後に投資をしており、2021年2月に110億ドル(約1.2兆円)でIPOしました。ID管理のAuth0も2018年に投資をした後にあっという間にユニコーン入り、ちょうど3年後の今年に65億ドル(約7150億円)でOktaが買収しました。

2017年にWiLの米国チームから投資検討の共有を受けましたが、当時の日本の感覚では「目が飛び出るほど時価総額が高い」と感じた記憶があります。結果をみてみるとあのタイミングで投資できたことは大変よかったです。

国内でも大型調達をするスタートアップが増えてきて時価総額が高いという声も聞こえてきますが、世界をみるとまだまだ伸び代しかない状況です。

海外ユニコーン勢はいずれも優れたビジネスとチームがあることはもちろんですが、IPOを急がずに未上場の間に大型調達をしながら、複数カ国での展開やエンタープライズ領域へと事業拡大してより大きなIPOを目指しています。日本のスタートアップもさらにこの先の進化があると信じ、マーケット拡大に向けて共に歩めればと思います。

話は逸れますが、PayPalによるPaidy買収でIPOとM&Aを同時に検討するデュアルトラックに耳目が集まりましたが、OktaによるAuth0買収などの事例を見ても、デュアルトラックはIPOにおける適正価格を導き出す手段であり、パートナーシップを通じた今後の成長可能性を模索する意味でも、これからデュアルトラックは国内で一般的に定着をしていくだろうと想像します。