なお余談だが、アダルト動画配信サイト「FANZA」でアダルト動画の売上げランキングを調べてみたところ、上位30タイトル中8タイトルがVR動画だった(2022年1月13日時点)。ゲームなどの決定的なキラーコンテンツが生まれていない中、VRゴーグルを動画視聴ばかりでPS VRやQuest 2使っているケースもあるのではないだろうか。

とはいえ動画需要が加わったとしても、PS VRが単体で黒字を出しているビジネスとは考えづらい。そんな状況下でなぜSIEはPS VRの新製品を作り、Quest 2のシェアを獲りにいこうとしているのか。それはおそらく、Metaをはじめとするテックジャイアントたちが「メタバース」に熱い視線を向けているからだろう。

Meta社が目指す「メタバース」の定義と、SIEのねらい

「メタバース」の定義は、広義では「インターネット上に作られた3D空間」というもの。その言葉は2003年に生まれたサービス『Second Life』で注目が集まったが、Second Lifeは成功したとは言い難い。最近ではニンテンドースイッチ『あつまれ どうぶつの森』や、スクウェア・エニックスのオンラインRPG『ファイナルファンタジーXIV』(FF14)などがメタバースに近いかたち(オンライン上でのアバターを使った交流)を実現したものとして挙げられることが多い。

メタバースの可能性についてはすでに各所で語られているが重要なのはMetaが膨大なFacebookのユーザー情報を利用して、絶対的なVR空間のインフラを構築しようとしていることだ。そこでSIEはVRゴーグルというハードウェアのシェアで食い込んでおくことが将来への投資となると判断したのだろう。

とは言え、Metaが構想しているメタバースが実現するまでには、まだ数年かかる。もしかしたら10年以上の歳月を必要とするのかもしれない。なにしろ、3DCG空間に街というコミュニティ空間を構築するだけであれば、すでにFF14のようなオンラインゲームが実現している。視点設定をVR対応に変更するだけならば、すぐにVRゴーグル対応にするのは容易だ。

Metaが目指している内容にはゲームも含むだろうが、あくまで主体はそこで「生活」することを目的とした空間にしたほうが対象ユーザー数は増える。しかもゲーム以上のグラフィックを実現しつつも、幅広いアクセス環境を想定することで、さらなるユーザー数の増加を見越しているはずだ。目新しさがビジュアル面だけではアクセス環境が限定されるばかりか、PCスペックの進化と共に古臭さを感じられてしまうことはSecond Lifeという前例があるため、みすみす同じわだちを踏むわけはない。