だがそんな“理想のメタバース”が完成してからVRゴーグルを開発していたのでは間に合わないし、VRゴーグル企業を買収するならば企業の資産価値が低いうちに買収したほうが出資額が少なくて済む。その結果がOcculusの買収だったというのが、私から見たMetaの思惑だ。当面は「VRコンテンツやゲームを楽しめる」ツールとしてQuest 2を存続させつつ、メタバース完成の暁には「メタバース用ゴーグルにも使えます」という新たな用途を見せ、さらなる普及を狙うのだろう。現状のVRゴーグル販売シェアを見る限りPS VR2以外は競合と見ていないだろうから、これ以上の技術開発にはあまり興味を示していないとも思える。その方が、将来的なQuest 2の利益率は高くなるというのも狙いの1つだろう。

そこまでの将来を見越したSIEとしては、PS VR2も当面はPS5専用のハイスペックVRゴーグルとして売上ナンバー2のポジションをキープしながら、自分たちでメタバースを提供する時にはQuest 2よりも高品位なVRゴーグル」というポジションを虎視眈々と狙っているに違いない。

ただし、SIEはまだPS VR2の発売時期や価格、外観を発表できていないということは、まだ状況を見ながら開発を続けていると推測でき、通常のハード開発のスケジュールから考えれば2022年内の発売は絶望的だろう。

この状態のまま、たとえば2022年6月に開催されるであろうアップルの開発者会議「WWDC」で、突然VR/AR兼用ゴーグルが発表されたとしたら……? はたまたMetaからQuestシリーズの新製品が発売されたら……? 大手ゲーム開発会社アクティビジョン・ブリザードの買収を発表したマイクロソフトもメタバース領域への動きを加速したら……? そう想像すると、もうひと波乱では済まなさそうではある。