成長速度は遅くとも手堅いビジネスで売上を2年で2倍に伸ばす

自社の成長速度について中川氏は「スケーラビリティは小さいですが手堅いのがキャスター。スパイクしない(急激にスケールしない)業界なのでコツコツ積み上げて、着実に成長しています」と話す。

「スタートアップ業界ではエンジニアがセグメントを決めてソフトウェアを開発するパターンも多く見られますが、我々は人が核です。(顧客と)コミュニケーションを取っているうちに出てきたニーズに対応していくのですが、対応するのは人なので、ソフトウェアを書き直す必要はありません。それである程度対応すると、求めている内容のベクトルが自然と深掘りできます。このような流れでセグメントを拡張させ、業績を拡大してきました」(中川氏)

BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)領域で事業をきちんと行っていれば、どこも似たような経験をしてセグメントを拡張していく、という中川氏。だが、「キャスターではリモートワーカーを中心に人材をそろえているので、探しやすさ、サーチ範囲が非常に広い。他社ではなかなか人が集まらず、成長速度が出ないところを、我々は見つけて集めることができるので、速く成長できる」と既存のBPOサービスとの違いについて、説明する。

「本来、大企業は人材確保のために、コストをかけて地方へ進出していました。キャスターは(リモートワーカーが中心なので)初期コストをかけずに全国をローリングできるため、有利なのです」(中川氏)

累積導入社数は2900社を超え、顧客継続率は96.7%。コロナ禍によって一般企業でもリモートワークへの理解も深まったことも追い風となって、前述したとおり、売り上げはコロナ以降のこの2年弱で2倍以上に伸びた。

冒頭でも触れたとおり、コロナ禍で急速なリモート化の波に乗ろうとした結果、逆にその波にのまれてしまった企業も少なくない。“揺れた”企業とキャスターの違いについて、中川氏は「創業当初から超長期目線で『リモートワークを当たり前にする』ことを考え、働き方の変化をど真ん中から狙っていたこと」を挙げる。

「コツコツ積み上げてきたことが、ここへ来て功を奏したのではないかと思います。また、労働人口減少など、今後の世界が抱える傾向とも合っていた。また、需要の大きさと我々の成長速度が、ある程度かみ合っていたこともよかった。さらには人材ビジネスでは、海外からのメガプレーヤーが本気で修正をかけてこなかったので、正面衝突せずに済んだことも『運が良かった』と言えるでしょう」(中川氏)