「ワンクリックで雇用」の世界到来に備えて手を打っていく

今回の第三者割当増資の引受先には、インキュベイトファンドをリードとして、グリーンコインベストメント、AXIOM ASIA Private Capital、UNICORN2号ファンド(山口キャピタルが運用)、第一生命保険が名を連ねる。

機関投資家からはコロナ禍で実感が広がった、リモートワーク人材市場の成長性や、課題に対する対応が評価されたのではないかと中川氏。また、2014年からのデータの蓄積や手堅い成長も認められたという。

調達資金は「今あるソリューションを地道に変えていく」ことに投資する。「最大で14%の応募者にしか就業機会を設けられていない現状を、1%でも上げていけるようにしたい」と中川氏は語る。

今後の市況について中川氏は、「日本では、総論としては風向きはポジティブです」という。

「人口減少が続く中で人手が足りなくなることはもう、数字上分かっていることで、その足りなくなった分をどのように変えていくかという議論は今後、20〜30年は繰り返されます。国内ではよほど変なことをしない限り拡大し続けるという認識でいます。むしろ個人的に気になるのは国外の状況です」(中川氏)

海外では、キャスター同様にリモートワークと人材ビジネスを掛け合わせたサービスのほか、日本の「Timee(タイミー)」と同じく隙間時間で働ける場・働ける人をつなぐサービスが伸びており、「米国では2年ほどでユニコーン企業になるスタートアップなども出てきている」(中川氏)そうだ。

「この領域では想定外の速度で各国からサービスが立ち上がっています。我々がど真ん中で衝突するところはないと思われますが、リモートワーク市場がそれらのサービスの立ち上がりによって、どのように変化するかは面白いところだと注目しています」(中川氏)

中川氏が例として挙げたのは、米Indeedが運営する「Indeed Flex」というサービスだ。Timeeと類似のサービスで、事業が最近かなり伸びているという。

「米国内ではこの領域の事業がすごく成長しています。日本で先に正面衝突するのはTimeeのようなサービスになると思いますが、ざっくり言えば『ワンクリックで雇用する』ような世界観に向けて発信しているプレーヤーがすごく多くなっています」(中川氏)

中川氏はまた、海外ではホワイトカラーとブルーカラーの人材サービス領域が一体化しつつあると述べる。

「米国などでは長期雇用でも短期雇用でも、契約がすぐに切れることには変わりありません。そこでフレキシブルワークという文脈で、リモートワークが“内包”されたサービスが出てくる可能性があります。そうなると、これまで国内では衝突がなく、警戒していなかったような巨大プレーヤーが(リモートワーク領域にも)登場する可能性も出てきます。そこを踏まえて我々もいろいろと手を打っていかなければと考えています」(中川氏)