一方、経営コンサルティング業界は、離職率が2番目に高い。企業向けソフトウェア業界も離職率が高く、エンジニアや技術系の従業員の割合が最も高くなっている。

同業他社間で離職率に大きな差

出典:MIT Sloan Business Review
出典:MIT Sloan Business Review

興味深いことに、同じ業界の中でも、離職率が高い会社とそうでない会社が大きく分かれている。例えば、ボーイング社の離職率が6.2%なのに対し、スペースX社では21.2%となっている。HSBC社では5.1%に止まっているが、ゴールドマン・サックス社では15.2%だ。

離職原因の1位は「有害な職場文化」

上記の表は、賃金や報酬が離職に与える影響を1とし、上位5つの離職に至る原因を数字で示したものだ。MIT Sloan Business Reviewによれば、有害な職場文化は、業界と比較した企業の離職率を予測する上で、報酬の10.4倍の力を持っているという。

出典:MIT Sloan Business Review
出典:MIT Sloan Business Review

ここからは、離職率の予測因子の上位5つについて詳細に見ていく。

1位:有害な企業文化

2位に大きく差をつけて1位となったのは、有害な職場文化だ。本レポートによると、有害な職場文化の主な要因は、多様性や公平性、インクルージョン(組織への参画・貢献を感じられる状態)を促進していないこと、従業員が軽視されていると感じていること、そして非倫理的な行動​​となっている。

米国では、求職者も企業を評価する文化が強い。実際の従業員からのレビューや報酬レンジが読めるGlassdoorや、匿名で自社に関する情報を書き込めるSNSのBlindなどで情報収集を行う。500万人のユーザー​​を持つBlindは、昨年5月に、Cisco Investmentsや韓国、シンガポールの投資家などからシリーズCラウンドで約43億円を調達している。

2位:雇用不安と組織内の再編

雇用の不安定さやリストラも、従業員の離職率に影響を与えている。チーム内でレイオフが続く、業界の勢いが衰えているなどの状況が原因で、安定した職につきたいと考えるのは、当然の流れだ。同レポートでも、非自発的離職(=解雇)が大企業の全従業員の退職者数に占める割合は4分の1以下であったとした上で、キャリアの見通しの悪さや、雇用が不安定であることが、従業員の自発的な退職にも大きく寄与していると考えられると述べられている。

3位:イノベーションが活発でワークライフバランスが取れない

いわゆるイノベーションが活発な企業から離職する人が多いことも報告されている。イノベーションの最先端を走る企業の従業員は、長時間、速いペースでの仕事が求められる。これが強いストレスとなり、バーンアウト(燃え尽き症候群)につながるケースもあるだろう。