渡部:コンビニエンス業界全体が抱えていた経営課題のひとつが「若年層の獲得」でした。とはいえ、若年層がコンビニへ足を運んでいないわけではありませんでした。ですがおにぎりや肉まんを1個だけ買うくらいで、コンビニでの化粧品との接点が低いんです。

NOINのメインユーザーはZ世代。彼らの属性やニーズなどがわかるデータもすでに揃っていました。多くのZ世代の決済手段は、後払いが30%、クレジットカード払いが20%、コンビニ払いが20%程度です。また後払いではコンビニ決済を使うユーザーも多かったんです。そうしたデータもあり、コンビニとNOINのユーザーとの相性は、そもそも良かったんですよね。

徹底したのは「試しやすさ」と「高いクオリティ」

大槻:販売する場所によって、売り方も変えなければならない部分も多いです。sopoは「ファミリーマート専売」として、どの点を意識したんですか。

渡部:化粧品業界が販売場所として、これまでコンビニに期待していなかった一番の理由は、多くのユーザーにとって「緊急時に買いに来る場所」となっていたからです。具体的には、急なお泊りで化粧品が必要になったり、ポーチにないことに気づいたりしたときでなければ、コンビニでコスメを購入する動機がなかったんです。

 

だからこそ、僕たちは「ファミリーマートでは良質な化粧品を買える」というイメージを定着させることにこだわりました。そこで意識したのが「試しやすいサイズ・価格設定」と「徹底した高いクオリティ」です。

「試しやすいサイズ・価格設定」では、sopoのサイズを小さくしてリーズナブルな価格に設定しました。それと同時に、グレー系やブラウン系などの定番色をあえて避け、イエロー系やグリーン系など「試したい」と思えるカラーラインナップを揃えたんです。あえて定番色を出さないのは、もはや根比べでしたね(笑)。価格帯をリーズナブルにしたおかげで、3色ほどまとめ買いするユーザーも多いです。

なぜ価格を下げられたのかという点では、もう1つ理由があります。ノインはsopo以外の事業があるので、利益はそちらで追いかければいい。その分、sopoは利益率を譲歩できるので、ユーザーにとってメリットになるものを優先的に提供することを決めました。

「徹底した高いクオリティ」はその名のとおり、高い品質を保つことです。それによって「コンビニコスメは緊急時に買うもの=品質が低くても仕方ない」というイメージを覆そうと考えました。誰もがSNSを通じて一次情報にアクセスできる時代だからこそ、小手先のマーケティング手法は通じません。「これが絶対にいい」と思われる品質でなければ勝つことができないのです。