自分はというと、ヘイにジョインして2年半経った頃で、(ヘイ社長の)佐藤裕介から「そろそろ起業してもいいんじゃない?」と勧められていて。もともと起業志向はありましたが、ゼロから立ち上げるというより、既存のドメインで自分に合う会社の経営に入るのもいいなと思っていたんです。それで候補先を探していたところに、たまたま投資家であり、もともと仲の良かったサイバーエージェント・キャピタルの近藤さん、北尾さんからペイミーを紹介してもらったという経緯です。

オファーを受けようと決めたのは、すでに認知が浸透している「Payme」というブランドを基盤として新たな挑戦ができると確信したから。そして、その挑戦の方向性が、僕自身がこれからの人生で実現したい社会のビジョンと一致したから。この2つの理由で、ペイミーの株式取得を進め、社長に就かせてもらいました。

Payme公式サイトのスクリーンショット
Payme公式サイトのスクリーンショット

──卜部さんが実現したいビジョンとは、どんなものでしょうか。

たとえ規模が小さくても、思いやこだわりを持って働く人たちの人生を、デジタルの力で支援したいと思っています。

このビジョンに至ったきっかけは、前職のヘイで運営するネットショップ運営サービスの「STORES」のオーナー(出店者)さんに会いに行ったこと。全国各地へ出向いて、100人くらいには会いにいったと思いますが、大きな気づきを得られました。僕は大学を卒業してからずっと東京で働き、「スタートアップの経営に関わる人生こそがカッコいいし、面白いものだ」と思い込んでいました。

でも、地方に出向いていろいろな産業に関わっている人たちに出会ってみると、本当に素敵な人たちがユニークで価値ある仕事をしていることを知ったんです。この無数の豊かな人生を支援することが自分の使命だと感じるようになりました。

──印象に残っている人はいますか。

例えば、熊本でお会いした魚の卸業を営む50代の男性は、「コロナの影響でウェディングの注文も途絶えて生活に困っていたけれど、友達が教えてくれたSTORESで魚を売ってみたらたくさん注文が入ってね」と笑顔を見せてくれました。インターネットを通じて個人同士の取引が可能になったことで、天草で獲れた新鮮で美味しい魚が、北海道のお客さんに届いて、どちらの人生も幸せにする。これってすごいことだよなと感動しました。

新卒で入ったサイバーエージェントでも「ABEMA(旧:AbemaTV)」の事業に深く関わって、エンタメが人の幸せを増やす価値は実感していましたが、生活に直結するお金が行き届くサービスは喜ばれ方のレベルが全然違う。経済面はもちろん、「生きる勇気を取り戻せた」と精神面での支えになれることに、僕自身もこれまでにないほどの喜びを感じました。