「働く人々のためのデジタルバンキング」を実現するという目標が明確になってきた頃に、ペイミーからオファーを受け、ここで挑戦しようと決断しました。

新たに目指す「ファイナンシャル・ウェルネス」の提供

──卜部さんがトップになることで、ペイミーにどんな変化が起きるのでしょうか。

まず、会社の定義を見直します。これから半年から1年ほどかけて、僕たちの存在意義であるコーポレート・アイデンティティを新たにし、働く人たちにより深い「ファイナンシャル・ウェルネス」を提供できる会社へと進化したいと考え、準備をしているところです。

──「ファイナンシャル・ウェルネス」とは。 

個人にとって本当の意味で便利で、豊かな人生につながる金融サービスの実現です。例えば、「給料はいつから労働者のものになるのか?」と考えたときに、日本では「月末の給料日に振り込まれたとき」というイメージが一般的です。しかし、欧米では「働いた瞬間から労働者のものになる」と捉えられます。

これは「Earned Wage Access(EWA)」と呼ばれ、労働者が自分が働いた分の報酬にいつでもアクセスできる権利は本来、固有のものだという考え方です。

「月末にまとまった金額を銀行経由で受け取る」という給料のフォーマットでは、この考え方は浸透しづらいものでしたが、フィンテックによって今の金融の“当たり前”を変えることができれば、日本でもEWAは広がっていく。結果として、これまで経済の恩恵を受けづらかった人たちにもウェルネスを提供できると考えています。

──具体的にはどんなアクションから始めていくのでしょうか。

コーポレート・アイデンティティのアップデートと同時に、既存のサービスのアップデートを進めます。具体的には、給与前払いサービスを受ける上で発生する6%の手数料負担を、ワーカー側ではなく企業側へと少しずつ変えていければと思っています。

──まさにEWAに基づくサービスへの転換ですね。しかし、実現するには企業側の理解が不可欠となりそうです。ハードルは高くないのでしょうか。

おっしゃるとおりです。僕たちのビジョンに共感していただけるクライアントと一緒に実現していきたいと思っています。企業側にとっては単純なコスト増になるので、この構想を理解いただけるか少し心配でした。でも実際に話してみると、予想以上に好感を持ってもらえることに僕も驚きました。

「ぜひそうしたいと考えていた」と即答してくださる企業も少なくなく、「自分たちの会社で働いてくれている現場のワーカーをもっと大切にしたい」と考える経営者は以前に比べて増えている。そんな感覚を得ています。