──これまでの取材で伺った話や他メディアでの取材話でも「小さい変更・仮説・検証のようなことを繰り返す、その最初の地道な変更こそが、ユーザーの心を掴んでいった」という話の印象が強いですが、まさにその通りといった感じでしょうか。

そうですね。「こういうものが求められてるんじゃないか」と思って作ってみて、「そうじゃない」と気づいて、「なぜそうなのか」をもう本当に何十回、何百回と繰り返していく。そうすると、同じような何かを新しく始めるときにも、「過去にこういうことあったから、こういうのは多分うまくいかなくて、こういうふうにやったらうまくいくんじゃないか」といった精度が上がってくるイメージはあります。ただ(そういう経験があっても)精度が著しく上がるというものでもありません。というのも、(外部)条件もどんどん変わっていくからです。

プロ野球に例えると、2割打者って「ギリギリプロ」みたいな感じですよね。ところがイチローでも打率は4割で、その2倍ぐらいしか打ってない。結局「5回打席に立って2回しか打てない」という話ではあるわけです。でもその繰り返しが積み重なると、ものすごく大きな変化になってくる。だから、「失敗しないようにすることはできないし、あのイチローでも三振するし」というような世界だなとは思います。

──「イチローでも三振する」で言えば、山田さんでも、いまだに仮説が外れたりするんですか。

いや、それはそうです。もうメルカリにおいても、あらゆる失敗をしてきましたし。でも、そこから学んで、すぐに修正する、ということをするようにして、失敗の数よりもちょっと成功の数が多いといったイメージだと思います。

──本当にそのサイクルを積み重ねていくっていうことなんですね。

海外事業に挑戦して実感したD&Iの重要性

──当初から海外進出は視野に入れていたと最初に伺いました。ご自身のプロダクトで海外に出ることで、心境の変化もあったのではないかと思います。日本と海外、同時にプロダクトを展開していく中で、開発チームを分けたり、ブランディングも変えたりといった試行錯誤をされてきたと思いますが、海外に出たからこそ、気づいたことはありますか。

日本ではそれなりに早く成長しても、やはりUSでやってみるとそうはならない。成長して受け入れられている感覚はあったんですが、そこはやはりアダプト(適応)するのがすごく難しかった。

そこでいろんな現地のエキスパートたちにジョインしてもらうわけですが、プロダクトを作っていく過程で、自分たちではこうだろうと思っていたことが、あっさり「いや、それはないでしょう」と言われたこともありました。で、今度はそれを鵜呑みにしたら、うまくいかなかったこともありましたし。だから「自分自身の判断がだいたい合っている」という状態から、「自分の判断で本当に合ってるんだろうか」と常に疑心暗鬼になりながら、やらなきゃいけないという感覚でした。