食べチョクでは商品代(送料を含まない商品代)の19.7%が手数料となる仕組みだ。そのため自分自身で販路を確立し、顧客対応やマーケティングもできるのであれば、BASEなど他の手段を選んだ方が手数料などの面では安く済む可能性がある。

もっとも、すべての生産者が自分で販売できるわけではない。実際に食べチョクを使う生産者の中には「(ECに)慣れていない人や、その知見がなくて困っている人」も増えてきている。そういったユーザーからは「顧客対応などのサポートや分析・集客の仕組み、消費者が集まる基盤などが評価されており、総合的に見れば安いと満足してもらえることも多い」(秋元氏)という。

上述した通り登録生産者の数が7000軒を超えた現在も、新規ユーザーの流入経路は既存ユーザーの紹介や口コミなど9割以上がインバウンドによるもの。それだけで毎月コンスタントに200〜300件の問い合わせがくる状態が続いているという。

代表の秋元氏
 

地銀VC6社などから13億円調達、高齢の生産者のサポート強化へ

今回の資金調達は「地方企業や自治体との連携の強化」を軸に、サービスをさらに成長させるのが大きな目的だ。

食べチョクの生産者は40代〜50代前後が多いが、農業従事者の平均年齢は67歳。高齢の生産者に対しては十分にサポートが届いていないのが課題の1つだと秋元氏は話す。一方で複数の生産者が共同で出品できる「ご近所出品」機能や自治体との連携によって、高齢の生産者がネット販売に踏み切れた事例なども生まれ始めているという。

「地方自治体と連携を進める中で、地元企業とタッグを組むことの重要さを感じました。特にインターネットに不慣れな高齢の生産者の方は、東京のよくわからない会社のサービスに登録することに対して心理的なハードルを感じられることも多いです。自治体や地元企業がサポートしているというだけでも安心感につながりますし、その際に身近に相談できる人がいることの意義は大きいと考えています」(秋元氏)

まずは地銀や地方自治体との連携を中心に生産者のネットワークを広げ、2023年中に登録数1万軒の突破を目指す方針。調達した資金はサービスの機能拡充やマーケティングの強化のほか、組織体制の強化にも用いる。

「規模が広がってきたとはいっても(生産者の数は)まだ7000軒。農業従事者が130万人いると言われていることも踏まえると、ごく一部の人にしかサービスが届いていない状況です。農業全体の底上げをしていくためにも、自治体との連携などを通じてもっと裾野を広げていくような取り組みを強化していきたいと考えています」