食べチョクの野菜
 

「9割は紹介や口コミ」生産者から支持を集める理由

生産者側の変化も同様だ。この2年ほどで“アーリーアダプター”と言われるような新しい取り組みに積極的なユーザーだけでなく、より広い層へと広がり始めている。

「数年前まで、産直ECは生産者の方にとって『おまけ』みたいな認識をされていることも多かったように感じます。実際に『個人向けは大変なイメージが強く、飲食店などの方が安定するよね』という声もよく聞きました。そんな状況がコロナで一変し、1つの販売経路に依存するのはリスクが高く、売り先のポートフォリオを組んで経営をした方が良いという認識が広がった。起業した当初は『今のままでいい』という生産者の方が大半でしたが、積極的に新しい販路を探している方が増えてきています。以前であれば産直ECがメインの売り先になると考えていた人はほとんどいませんでしたが、食べチョク自体も規模がかなり大きくなり、(生産者によっては)それがメインの選択肢になってきているのが大きな変化です」(秋元氏)

秋元氏の話では、産直ECに初挑戦する生産者にとって最初のハードルになりがちなのが「顔が見えない顧客とのコミュニケーションやトラブル対応」だという。

特にトラブル対応は慣れていない生産者にはストレスになりやすい。そこで食べチョクは生産者と消費者をつなぐプラットフォーム型のサービスではあるものの、担当者が両者の間に入ってやりとりをサポートするなど、初期から手厚いサポートを重視してきた。

また蓄積されたデータを活用して“データに基づいた”商品設計や集客の支援も手掛ける。担当者によるサポートやサイト側の施策だけでなく、生産者向けの「ダッシュボード」も開発し、生産者が自力で重要な指標や改善点を一眼で把握できる仕組みを作った。

生産者用のダッシュボードのイメージ
生産者用のダッシュボードのイメージ

こうした取り組みの結果として、近年は水産物や畜産物の領域で月間の最高売上が1000万円を超えるような規模の生産者が複数生まれている一方で、小規模ながら着実に売上を拡大している生産者の事例も増えてきた。

ある生産者は家族経営で少量多品種の作物を手がけており、2018年に食べチョクでの販売を開始。利用前後で売上は430%増加し、現在は全体の売上の8割を食べチョクが占めているという。

生産者の視点では、産直ECに挑戦できるサービスは食べチョク以外にも「ポケットマルシェ」など複数の選択肢が存在する。食品などの産直に特化したものではないが「メルカリShops」や「BASE」も同じ用途で使うことができる。