「大企業の場合は(採用人数が多いため)どうしてもプロセスが複雑になりやすい。採用プロセスをノーコードで細かく設計できる点に価値を感じていただけています。一方で中小企業は『ひとり人事』という言葉も存在するように、とにかく人手が足りなくて悩んでいるケースが多いです。そこで日程調整や社内外への連絡、エージェントとのやりとりを自動化できる点が喜んでもらえています」(吉田氏)

大企業から中小企業まで累計で1000社以上が活用

sonar ATSは管理する応募者の数によって月額の利用料金が変わるビジネスモデルだ。応募者数が1000人までであれば月額2万円程度で使えるため、大手上場企業から地方の中小企業まで幅広い顧客に活用されている。

特に中小企業の現場では、Excelやスプレッドシートなどを使いながら手作業で応募者の管理をしているところも多く、生産性が課題になってきた。

大企業の場合はなんらかの採用管理ツールを導入していることも多いが、採用フローの設計のしやすさや自動化を始めとした機能面がきっかけとなってsonar ATSに乗り換えることがほとんどだという。

ナショナルクライアントと言われるようなエンタープライズ企業では、年間で500人規模の新卒採用をするところもある。採用業務に携わる担当者の数もその分だけ多く、採用プロセス自体も多様で複雑化するため、応募者ごとの最適化と業務の効率化を両立できるツールへのニーズが高い。

またそのような状況から一部の業務を外部に委託する場合もあるが、近年は「採用のインハウス化」に向けた流れが加速しており、社内で細かい要件なども含めてコントロールしたい考えが強くなっているという。

sonar ATSの設計思想は営業支援ツールやマーケティングオートメーションツールにも近い。吉田氏は前職の双日時代にIT部門で勤務しており、シリコンバレーに駐在した経験を持つ。そこで当時注目を集めていたのが「Salesforce」だ。

「Salesforceがやっているのは、見込み客を獲得した後に受注までのプロセスを可視化した上で、(細かい業務を)自動化していくこと。この流れは採用にも共通していますが、当時は応募者が応募してから入社に至るまでのプロセスを科学するような仕組みがありませんでした。そこでこの概念を採用に持ち込んでみようと思ったことがきっかけです」(吉田氏)

採用コンサルと商社でのIT業務の経験を活かして起業

Thinkings代表取締役社長の吉田崇氏
Thinkings代表取締役社長の吉田崇氏

sonar ATSはもともとインフォデックスとイグナイトアイの2社が共同で運営してきたサービスだ。吉田氏は採用コンサルタントとしてキャリアをスタートした後、双日を経てイグナイトアイを創業した。過去に経験してきたHRとITの知見を掛け合わせて、新しい挑戦をしたいと考えたという。