当時から採用管理システム自体は存在していたが、まだSaaSという言葉も浸透しておらずASP(アプリケーションサービスプロバイダ)と言われていた時代だ。クラウド型のツールも珍しく、オンプレミス型が当たり前だった。

そのような背景もあって、サービス立ち上げ当初はなかなか理解を得られないこともあったが、そんな中で興味を持ってくれたのがマーケティングや広告業界の企業だ。上述したようにsonar ATSはマーケティングの考え方を採用に持ち込んだような思想のサービスだったため「やってみたかったけど実践するための手段がなかった」と初期の顧客になってくれた。

採用チャネルごとの分析機能なども実装
応募経路ごとの分析機能なども実装

2010年代後半になると日本でも次第にHRTechやSaaSの波がきたことで、幅広い業界で導入が加速。2020年にはさらなる事業拡大を見越して2社が合併し、​Thinkingsとして新たなスタートを切った。

それまでは黒字経営をもとにした自己資金で堅実に事業を展開してきたが、2021年にはVCから初めての外部調達も実施した。結果として現在は累計導入社数が1000社を突破し、MRRも1億円の大台を超えるサービスになっている。

「採用管理SaaS+マーケットプレイス」の独自モデルでさらなる拡大目指す

近年はシンプルな採用管理ツールを超えたサービスの実現に向けた挑戦も始めている。その1つがさまざまなHRツールを購入できるマーケットプレイスのsonar storeだ。

これは「HRサービスに特化したAmazonのマーケットプレイスのようなもの」で、連携する30以上のパートナーのサービスを購入できるというもの。この仕組みはsonar ATSに内包されており、採用活動を進める中で浮き彫りになった課題の解決策をそのまま購入し、すぐに使えるのが特徴だ。

SaaSにマーケットプレイスがひもづいた仕組みは「SaaS Enabled Marketplace」と呼ばれ、海外では増えてきているものの、日本の採用領域ではまだ珍しい。

「もちろんThinkingsとしても採用課題のソリューションを提供していきますが、自分たちだけで多様化するニーズに対応していくのは難しい状況です。さまざまなパートナーと連携し、各社の展開するサービスと組み合わせることで、あたかも1つのシステムのように便利に使える世界観を実現していきたいと考えています」(吉田氏)

sonarでは採用活動を進める中で浮き彫りになった課題の解決策として、パートナー企業のHRツールをマーケットプレイスとして販売する仕組みも作った
sonarでは採用活動を進める中で浮き彫りになった課題の解決策として、パートナー企業のHRツールをマーケットプレイスとして販売する仕組みも作った

近年はマイナビやリクルートといった老舗大手からビズリーチのようなメガベンチャー、HERPを始めとしたスタートアップなど採用管理ツールを手掛けるプレーヤーが多様化してきている。まさに吉田氏が「わかりやすいシグナルとして数年前に比べても競合が増えているように、市場が成長期に入った実感がある」と話すような状況だ。