「海外製の製品はセキュリティエンジニア向けに作られているものも多い印象です。ただ日本の場合は米国などとは異なり(開発を外部のSIerなどに委託しているため)社内にエンジニアがいない企業も珍しくなく、エンジニアではない人がCSPMに触れるケースも多い。そのためエンジニア以外の担当者にもわかりやすい体験やサポートが必要だと考えています」(岩佐氏)

実際にある大手企業は導入時に海外製の製品とも比較した上で、サービスの使い勝手や運用のしやすさを決め手にCloudbaseを選んだという。

知人のアドバイスをきっかけに業界を徹底研究

LevettyではCloudbaseを手がける前にも、複数のサービスを開発してきた。岩佐氏自身は10歳の頃にプログラミングを始め、Levetty創業前には複数のスタートアップに勤務。iOSエンジニアとして10個以上のサービスローンチに携わった。

Levettyを起業した後も「思いついたものはすぐに実装してみるスタイル」で、開発したサービスはARやビデオチャット、音声SNS、スマホアプリのテスト自動化サービスなど多岐に渡る。

そんな岩佐氏がCloudbaseの開発に向けて動き出したのが2021年の秋ごろ。きっかけとなったのは共通のVCから出資を受けていた医療系スタートアップ・HOKUTO代表取締役の五十嵐北斗氏のアドバイスだった。

当時セキュリティ教育関連のサービスを運営していた岩佐氏は、それまでと同じようにオフィスでは常にエディタを開き、思いついたアイデアを形にするべくコードを書き続ける日々を送っていた。そんなある夜、いつものようにシェアオフィスで仕事をしていると五十嵐氏に声をかけられたという。

「いつも遅くまでコードを書いているけれど、試しに今やろうとしている領域の競合や各社がターゲットにしている顧客の情報、業界の構造などをホワイトボードに書き出してみてはどうか」

そう言われた岩佐氏は、ペンをほとんど動かすことができずに止まってしまった。そんな様子を見た五十嵐氏からは「君がやろうとしていることは暗闇の中を地図なく歩こうとしているようなものだよ」とアドバイスされた。

その日から3カ月間、岩佐氏はエディタを開くのを止め、セキュリティ領域で1番いい事業は何かを探るべく業界のリサーチを徹底的に進めた。中でもクラウドセキュリティ領域はグローバルで盛り上がっているが、日本でも再現性はあるのか。SIerや事業会社のキーパーソンにもヒアリングを重ねていく中で、各社が課題を抱えており、日本でやるべきだと考えた。