当時、士業・管理部門の求人情報の少なさに課題を感じていた山本氏は、士業・管理部門に特化した人材サービスを展開しようと考えたが、求人を掲載してくれる企業や事務所とのネットワークもなければ、サービスを開発するための資金もない。そこで、まずは営業代行などを展開していた。

約1年が経ったタイミングで、当時コロプラが運営していた学生起業家向けのファンド「コロプラネクスト」から出資を受け、自社サービスの開発を進めていき、まずは弁護士事務所にアルバイトに行けるサービス「ヒュープロアシスタント」を立ち上げた。

「当時の私にとって出資していただいた金額は大きかったこともあり、これだけのお金があれば何でもできると思ったんです。それで『まずはとにかく人が必要だ』と思い、人を採用しまくったんです。今思えば恥ずかしいのですが、そのときは『採用ができている会社=うまくいっている会社』というイメージを持っていたので、事業のことよりも採用のことだけを考えていました。当たり前ですが、それでうまくいくはずがありません」(山本氏)

インターン生を含めて15人ほどを一気に採用したが、サービスのマネタイズの仕組みなどはできあがっていない。人だけは増えていくが、収益が上がらない状態に陥り、すぐさま組織は空中分解していった。

「あっという間に組織は私だけになりました。当時、インキュベーション施設に入居していたのですが、周りの目が恥ずかしくて3カ月は何もせずに過ごしていました」(山本氏)

“シングルマザー”からの言葉で提供価値が明確に

ヒュープロアシスタントは立ち上げ当初苦労したが、山本氏は士業の採用ニーズは感じ取っていた。知り合いの弁護士事務所や税理士事務所から「採用を手伝ってよ」と言われることもよくあったという。そうした声に応えるかたちで、手元に残っていた資金を使って現在の「最速転職 HUPRO」を立ち上げた。

求人へのエントリー数は多くなかったが、とある“シングルマザー”からの言葉がヒュープロにとって大きな転機となった。

「求人にエントリーしてくれたシングルマザーの方は、働きながら子育てもしなければならず、エージェントに会う時間もなかったんです。私たちも一度、『お会いしましょう』と言ったのですがお会いすることは叶わず、代わりにメールのみでのやりとりを実施したところ、2週間で転職が決まりました」

「その後、その方から『一般のエージェントは会えない人には求人を紹介できないと言われ、相手にしてもらえない中、ヒュープロさんのおかげで転職することができました』と言ってもらえたんです。その言葉を聞いて、私たちが提供すべき価値は、会うなどの手間を省き、とにかく手間なく早く転職できるようにすることだと思いました」(山本氏)