またナイジェリアのPEファンドと手を組むことで「出資後の成長支援」にも取り組む。「ガバナンスなどの概念が十分ではないまま市場が広がり、バリュエーションだけが上がった企業も増えた」(VKAVパートナーの品田諭志氏)側面がある中で、PEファンドの知見を活かしながら適切な成長やエコシステムの健全化を目指すという。

ビッグ4が牽引、フィンテック中心も2022年には多角化が進む

近年、アフリカのスタートアップ市場の成長を牽引してきたのが“ビッグ4”と呼ばれる、ナイジェリア 、エジプト、ケニア、南アフリカの4カ国だ。他国に比べてレイターステージの企業が多いこともあり、この4カ国の調達額が全体の70〜75%程度を占める。

特にフィンテック領域を中心に大型の資金調達を実施するプレーヤーも増えてきた。

ナイジェリアの決済スタートアップ・Flutterwaveは2022年2月に約30億ドルの評価額で2億5000万ドルを調達。同国で金融サービスを展開するユニコーン企業のOPayにはソフトバンク・ビジョン・ファンドなどが投資をしている。直近ではエジプトでデジタルバンクを手がけるMNT-Halanがユニコーンの仲間入りを果たしたことを複数のメディアが報じた。

Stripeがナイジェリアの決済スタートアップ・Paystackを買収したように、まだ数は少ないものの大手企業によるM&Aの事例も生まれている。

アフリカは「(銀行口座などの)インフラとなる既存サービスの浸透率が低いため、代替手段が必要となり、結果的に新たなサービスが生まれやすい」(山脇氏)。事業拡大にあたって物理的な工場なども必要なくスタートアップ的な成長モデルを描きやすいほか、対象となるユーザーが多く裾野が広いこともあり、大型のフィンテック企業が生まれているというのが山脇氏の見立てだ。

一方で2022年に関してはフィンテック一辺倒ではなく、コマースや農業、交通、エネルギーなど他の領域からも有望なスタートアップが出てきている。エリアについても調達額では依然としてビッグ4が中心だが、調達案件別では地域の幅が広がり「(直近1年でも)マーケットが広がっている」と品田氏は話す。

投資家の顔ぶれについても同様だ。2020年から2021年ごろにかけてソフトバンク・ビジョン・ファンドやSequoia Capital、Andreessen Horowitなどグローバル投資家の進出が加速したが、直近は景気悪化などに伴ってその動きが減速。結果としてレイターステージにおいては「(アメリカほどではないものの)ファンドレイズが難しくなった1年だった」(品田氏)