かたやシードやアーリーステージにおいては1000万ドル以下のファンドがアフリカ内で続々と誕生。「かなりコンペティティブな(競争が激しい)状態」になりつつあるという。

ファンダメンタルの強い企業に注目、スタートアップ間のM&Aも加速

従来はフィンテック領域を中心に、海外で先行する企業のモデルを模倣したスタートアップが国内外の投資家から高い評価を受けることも多かったが、市況が変化する中で「調達に苦しむ企業も多い」(品田氏)。

一方で「ファンダメンタルの強い企業」に資金が集まるような状況が生まれており、それが事業領域の多様化にもつながっているという。一例をあげると、VKAVの投資先の1社であるShuttlersはバスのデジタル化に取り組んでいる。

現地では既存の交通インフラが未成熟のため“野良バス”のようなバスが主流となっていたが、メンテナンスが悪かったり、社内が混雑したりと課題が多かった。Shuttlersではその体験をアップデートし、アプリからバスの位置やルートがわかり、オンラインで予約と決済ができる仕組みを作っている。言わば「Suicaを使って快適にバスに乗れる体験」(山脇氏)を作ることによって事業を成長させてきた。

「アフリカは公共インフラなど社会に必要な仕組みが十分に整っていない部分も多い。そこにスタートアップがデジタルを組み合わせ、経済性を持たせながらサービスとして提供している例がいくつもあります。(先進国と比べて)経済水準の観点などからマネタイズは簡単ではありませんが、その一方で人々の暮らしを根本的に変えるような事業を生み出せるのがアフリカの特徴です。スケーラビリティやインパクトの大きさは、アフリカ投資の面白さだと感じています」(山脇氏)

高い評価を受ける企業が少しずつ増えてきた中で「同業のスタートアップ同士のM&A」が増えてきたことも近年の大きな変化だ。

アフリカのある国で成長したスタートアップが、アフリカ全土への展開を視野に他国へのマーケットに効果的にアクセスするべく、現地の同業者を株式交換で買収する。そのような例が顕著に増えているという。VKAVが出資しているChariはモロッコ発のB2Bコマースのスタートアップだが、すでにモロッコ内に加えてチュニジアやコートジボワールなど複数カ国のプレーヤーを買収し、事業規模を拡大している。