「最初は(特定の領域における)少ない顧客のニーズにしっかりと刺さるものを作ることから始めます。それをクリアしたら、今度はその領域を代表するような顧客へとアプローチして、さらに深く刺さったプロダクトへと磨き上げていく。そこまでいったら隣の業界へ行くという戦略で、少しずつ対象を広げてきました」(蓮田氏)

最初はフィットネスジムの中でも、ヨガや暗闇フィットネスなどスタジオレッスン型の店舗に注力するかたちで展開した。入会手続きが紙ベースで行われていた店舗が多く、会員情報を効果的に管理できておらず属人化してしまっているという課題もある。まずは煩雑な手続きをデジタル化し、共通の会員情報を基に接客ができる仕組みを整えた。

次に取り組んだのが、近年増えている24時間ジムのサポートだ。スタッフがいない時間帯でも入会手続きができる機能を作り、スマホを会員証として入り口のドアを解錠できるように、ソフトウェアだけでなくハードウェアも提供をした。

領域を少しずつ広げながら、顧客の課題解決につながる機能を拡充していくことで、hacomonoで提供できるサービスも増加。結果としてさまざまな顧客のニーズに1プロダクトで応えられるような基盤が整い始めている。

特に総合フィットネスクラブを手がける電鉄系や不動産系の企業の中には、スポーツスクールやレジャー施設など複数の業界で店舗を展開しているところも多い。そのようなケースでは1つの企業内においてもhacomonoの利用シーンがどんどん広がっていっているのだという。

今後もhacomonoではプロダクトの機能拡充や横展開を進めていくが、新しい軸として「Fintech」領域のサービス開発にも力を入れる。

蓮田氏の話では2023年内の提供を予定しているEC機能を皮切りに、これから数年でマルチペイメントやトランザクションレンディング(少額の融資)、ファクタリング、業務委託スタッフへの支払プラットフォームなど金融サービスを広げる計画だ。

 

hacomonoに蓄積されている店舗の日々の売上データなどは、与信にも活用できる。融資に関しては今回株主として参画しているGMOグループとも連携しながら、サービスを提供していく方針だという。

「1つのベンチマークにしているのが、レストラン向けのSaaSを展開している『Toast』です。同社ではオンラインオーダーから在庫管理、顧客ロイヤリティ管理、支払いに至るまで幅広いサービスを提供していて、Toast Capitalという金融事業も手がけています。我々がイメージしているのは、そのウェルネス業界版のようなものです。垂直統合型で(対象としている)業界の企業の経営をあらゆる観点からアップデートするという事業者は日本だとあまり例がなかったので、この領域において日本を代表するような企業を目指していきます」(蓮田氏)