その一方で悔しい思いもあります。スタートアップやベンチャーの役割は「平時から世の中を変えていくこと」なのですが、それができなかった。結果的に、コロナ禍など社会全体が変わらざるを得ない大きな出来事によって、初めて行動や価値観が変わり、数字が伸びている。そこには僕らの努力不足、力不足でもあると思います。

とはいえ、粛々とクラウドファンディングに向き合い続けた結果として今があるので、今後も粛々とやっていく。そこに尽きるかなと思っています。

──今後、どういうプラットフォームになっていきたいと思っていますか?

CAMPFIREはコロナ禍で資金調達や販路開拓のためにクラウドファンディングをする文脈で使われた結果、業績が伸びました。この理由の本質について、BASE代表の鶴岡(裕太)さんやhey代表の佐藤(裕介)さんと一緒に考えていたんですが──僕たちがやっているのは、表面上は「ショップをつくる」「クラウドファンディングで資金集めをする」ということかもしれないけれども、本質的には「オンライン化されていなかったアセットをオンライン化すること」だという結論にたどり着いたんです。

例えば、Twitterすらやっていなかった居酒屋やウェブで物を販売してこなかった生産者たちの魅力や思い、哲学、物語といったものを、クラウドファンディングを通じてDX(デジタルトランスフォーメーション)している。

その結果、支援という形でファンやお客さん、応援者との繋がりが可視化された。デジタル化されてなかった魅力をデジタル化するという新しい価値に気づけました。

だからこそ、今後は繋がりをベースとした新しい金融の仕組みとしてCAMPFIREをもっと大きくできると思っています。例えば、プロジェクトをやる人と応援する人は一方通行ではなく、応援している人がプロジェクトオーナー側になることもあるし、プロジェクトオーナーだった人も応援する側にまわることもある。既存の金融機関の仕組みでは賄えなくなることも増えていくと思うので、そういうときにお互いに支え合って生きていくためのプラットフォームとして真っ先に使われる存在になっていきたいです。