筆者の健康コード、上記緑色が状況によって変色する。下の72時間はPCR検査の有効時間。画像は加工済み
筆者の健康コードのスクリーンショット。上記緑色が状況によって変色する。下の72時間はPCR検査の有効時間。画像は加工済み

これは全市民がコミュニケーションアプリの「WeChat」や決済アプリの「Alipay」とひもづけて使用しているデジタル健康コード(健康码)で使用者の位置情報を取得し、管理しているためだ。

デジタル健康コードの表示は、健康であることを示す「緑」から、対象地域へ滞在したことが観測される「オレンジ」、さらに感染が確認された「赤」とカラーが変わる。

このデジタル健康コードでの追跡対象は現地の住民だけではない。隔離対象地域へ物資を運搬するトラックドライバーもその対象となる。対象地域に滞在したことでオレンジ色へ健康コードが変化してしまうと、ドライバーへの社会生活への負担が増加してしまう。

大手テック企業に加え、地元発企業による自動運転システムが活躍

この危機に対応するために現在進行形で活躍しているのが、各企業が実験してきた無人の自動運転車両たちだ。6月4日の広東省の大手通信社である中国南方網の報告によると、すでに複数企業の自動運転車両が広州市の現場に導入されている。

検索エンジンを中心とするデジタル企業である百度(Baidu)が開発した無人運転システム「Apollo」、ネット通販を展開する京東商城(JD.com)が無人倉庫物流から発展させた無人車両など大手企業も活躍しているが、無視できないのは広東省広州市を中心に成長してきた地元のハイテク企業・文遠知行(WeRide)億航智能(EHang)だ。

WeRideは2017年設立の企業で、開発や実験の場として本社のある広州市に根付いて活動してきた。日本では決して名の知れた存在ではないが、2021年2月には広州の郊外の黄浦区とバイオ企業が集中する生物島で、一般消費者も試乗できるレベル4段階(非常時には人間のドライバーが危機対応)の無人運転タクシーサービス「RoboTaxi」を開始している。

アプリによる呼び出しで無人運転を体験できる「RoboTaxi」
アプリによる呼び出しで無人運転を体験できる「RoboTaxi」

今回WeRideは、隔離地域向けに物資を届けるための自動運転バスを提供している。隔離地域外で物資を乗せたバスは隔離地域まで自動で移動し、到着地点で住民が物資を棚卸しする。そののち、バスは再び隔離地域の外まで移動する。

WeRideのウェブサイトのスクリーンショット。画面左の自動運転バスが、今回隔離地域向けの物資輸送に使われている
WeRideのウェブサイトのスクリーンショット。画面左の自動運転バスが、今回隔離地域向けの物資輸送に使われている

広州市発のドローン企業である億航智能(EHang)も無人運送の期待の星だ。すでに北米のNASDAQで上場している同社は、自動運転で空を飛ぶ都市型交通であるドローンタクシーを開発。まだタクシーとしての民間利用はこれからだが、今回の広州市だけでなく、僻地での宅配便や医療用品の緊急配送などで、中国全土13の地域での運用がはじまっている。