テラヘルツ帯はほぼ未開拓の領域だ。まずテラヘルツ帯ほど高い周波数ともなると、電波を作り出すこと自体が難しい。そのため現状ではほとんど利用が進んでいないという。
さらに、実用性の問題もある。一般に電波は周波数帯が高いほど遮蔽物に弱く、指向性が強くなる。離れた場所の端末と電波をやり取りするモバイル通信の場合、ビームのような通信信号を、端末に対して正確に当てるためのアンテナ技術が必要となる。
ソフトバンクでは前者の指向性の問題について、ユニークな解決策を提案している。「回転アンテナ」だ。原理はシンプルで、360度に回転するアンテナをパラボラアンテナのような反射版で拡散させる。壁などに当たると電波は減衰するため、端末が受け取る信号の総量は減ってしまうが、多くの帯域が使えるテラヘルツ帯なら十分な速度が出せるという。
現時点ではテラヘルツ帯の電波を作り出せるパワー・アンプが存在せず、アンテナもスマホに収まるようなサイズではない。テラヘルツ帯の実用化には半導体の高機能化を待つ必要があるだろう。ソフトバンクでは岐阜大学、NICTとともにテラヘルツ帯の超小型アンテナの開発を進めている。
また、テラヘルツ帯が実用化されると、モバイル通信に新しい機能が追加される可能性もある。テラヘルツ帯は指向性が高いため、モノに当たった反響波を分析することで、そのモノの形状を推測できるという。このテラヘルツ帯の性質は、空港などで不審物を判別するボディスキャナーとして実用化されている。
ソフトバンクでは6G/Beyond 5Gでのテラヘルツ帯の実用化によって、空間センシングワイヤレス電力伝送といった新しい機能が導入できないか期待しているという。