【無料公開】マイナス金利解除も「都合が良過ぎる」政府の長期金利見通し、「金利のある世界」の議論をPhoto:PIXTA

政府の財政中長期試算の「成長実現ケース」の長期金利の前提は今後、数年は名目成長率や物価上昇率を下回ります。財政の持続性をチェックするにはあまりに都合の良過ぎるシナリオで、金利上昇に備えて現実的なものに見直す必要があるはずです。人気連載『金利復活』から、みずほリサーチ&テクノロジーズエグゼクティブエコノミスト 門間一夫氏の寄稿をもう一度、紹介します。

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金融政策は正常化スタート
低過ぎる長期金利の見通し

 日本銀行は3月19日の金融政策決定会合で、安定的、持続的な「2%物価安定目標」実現が見通せる状況になったと判断し、マイナス金利の解除やイールドカーブコントロール(長短金利操作)の撤廃など、金融政策の正常化に踏み出した。

 金融市場の関心は、金利がどこまで上昇するかに移っている。日本にもついに「金利のある世界」が訪れるのだとすれば、それが企業、家計、政府にどのような影響を及ぼすのか、心配する人々が増えてくるのも当然だ。

 家計や企業を個々に見れば、金利の上昇で得をするケースもあれば、苦しくなるケースもあるが、最も大きな影響を受けるのは、大局的に見れば最大の債務者である政府だ。

 だが政府内に「金利のある世界」への準備ができているのかどうかは心もとない。それを象徴するのが、1月に公表された「中長期の経済財政に関する試算」(中長期試算)での長期金利の見通しだ。

「成長実現ケース」では今後、8年は長期金利が名目成長率を下回り、対GDP(国内総生産)比の政府債務比率が低下する絵が描かれている。

 中長期試算の甘さはこれまでも言われてきたが、利上げが現実になる状況で「都合の良過ぎる」シナリオは早急に変える必要がある。