政府の半導体支援予算は2021~23年度の3年間で総額3.9兆円に上る。24年度も経済産業省は、ラピダスの追加支援を中心に巨額の半導体予算を要求する構えだが、財務省は予算計上の前提として財源の確保を求めており、交渉は熾烈を極めることになりそうだ。特集『半導体 “狂騒”の真実』の#4では、経済産業省が公表した資料を基に、世界各国の半導体支援の正確な実態を明らかにしていこう。(ダイヤモンド編集部 村井令二)
ラピダスの資金調達を公的支援へ!
裏に半導体の“予算膨張”を懸念する財務省
経済産業省は5月31日、有識者を集めた半導体・デジタル戦略の検討会議で、ラピダスが2027年に予定する最先端半導体の量産準備の資金を確保するため、新たに制度的な支援を検討していることを明らかにした。借り入れや社債発行に政府保証を付ける案などを含め、ラピダス自身の資金調達を後押しする。
ラピダスの量産までには5兆円の資金が必要とされ、政府はすでに9200億円の財政支援を実施している。
これまでラピダスは、必要資金のほぼ全額を国の補助に依存してきたが、政府保証を付けることなどを通じて資金調達の選択肢を増やす。経産省は必要に応じて関連法案を整備し、早ければ秋の臨時国会で法案審議したい考えだ。
「ここで支援をやめればラピダスは終わる」(経産省幹部)――。そうした強い危機感を持つ経産省は、24年度も、例年秋に議論が本格化する補正予算を念頭に追加の予算を要求していく構えだ。半導体支援には過去3年間で総額3.9兆円の予算を計上しているが、その「上積み」を狙っていく。
これに対して財務省は、半導体関連予算の膨張をあからさまに警戒している。
財政制度等審議会(財務相の諮問機関)が5月21日にまとめた建議(提言)では、半導体支援について「安定的な財源と一体で、複数年度の支援戦略を描くべき」と指摘。過去3年間の半導体関連予算は財源の裏付けがほとんどないまま計上されたが、今後の半導体の追加支援は「財源とセットで考えるべきだ」との立場を鮮明にした。
すでに経産省と財務省は、ラピダスを中心とする半導体支援予算の積み増しを巡って攻防を熾烈化させている。
財政審の提言を協議する中で財務省は、先進各国の半導体支援額の比較データを示して「日本の支援額の対国内総生産(GDP)比率は突出している」とし、半導体の巨額支援の在り方に疑問を呈した。
これに対して経産省は31日の戦略会議で、最新の状況を反映した各国の半導体支援の比較データを提示し「日本の支援は突出していない」と猛反論して“火消し”に回っている。
次ページでは、財務省と経産省が公表した各国の半導体支援の違いを詳細に解説する。
その上で、半導体の支援予算の上積みを狙う経産省と、それを警戒する財務省の攻防の最前線に迫る。