電通グループが発表した「2020年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」によれば、2020年のネット広告費は2兆2290億円。すでにテレビの広告費を超えており、日本における総広告費の約3割を占める。

今ネット上で目立つ虚偽・誇大広告の多くは、「アフィリエイト広告(成果報酬型広告)」で、広告主(事業者)は代理店を通じてアフィリエイター(メディアを運営する個人や企業)に成果報酬型で広告作成を依頼するというもの。それ自体は何の問題がない仕組みだが、成果を上げるためにアフィリエイターが過激な広告表現を用いるようになってきたのだ。ある匿名の業界関係者は「法令に違反すると分かった上で虚偽・誇大広告を作成する悪質なアフィリエイターも存在する」と説明する。

もちろん悪質なアフィリエイターだけの問題ではない。広告主や代理店はアフィリエイターによる薬機法違反を特には黙認し、発覚した際には広告主は代理店へ、代理店はアフィリエイターへと責任転換するというケースもあるという。「彼らは罪をなすりつけ合っており、広告主や代理店が『アフィリエイト会社が勝手にやった』ということで責任逃れをしようとするケースが起こっています」(業界関係者)

JAROでは2020年度、悪質な広告15件に対して厳重警告を出しているが、わずか1件を除く14件がアフィリエイトに関するものだった。厳重警告を受けたのは以下のようなアフィリエイト広告だ。

・毛穴の汚れがごっそり取れる、ノーベル賞受賞成分のコスメなどとうたい、鼻の角栓の合成写真を広告に使っていた化粧品のジェル

 

・濃いシミもぽろっと排出などとシミがはがれてなくなるかのような広告をしていた卵隔膜を使った美容液

 

・白髪が消えるかのような表示をしていたシャンプー

課徴金導入により罰金の上限金額が事実上撤廃

薬機法では医薬品や化粧品などの広告における虚偽・誇大表示(名称、製造方法、効能、効果、性能等)を禁じている。虚偽データを元にした表現や承認効能を逸脱した表現の広告は違反となる。

従来、罰金は最高で200万円だったが、今後は違反していた期間における売上額の4.5パーセントの課徴金を課すことになるため、事実上上限が撤廃されるかたちとなる。ただし売上高が5000万円未満の場合、課徴金納付の対象にはならない。

厚生労働省 医薬生活衛生局 監視指導・麻薬対策科の野原形太氏は、課徴金制度の施行をきっかけに、虚偽・誇大広告が減ることを期待しているという。

違反広告増加の背景にある「D2Cブランド」の台頭

課徴金制度自体は、2013年に発覚した製薬大手ノバルティスファーマの高血圧症治療薬「ディオバン」を巡る臨床データ改ざん事件をきっかけに導入されたたものだ。だがその騒動から8年たった今、虚偽・誇大広告を出すのは同社のような製薬大手だけではない。