Eコマースの拡大により、化粧品やサプリメント(食品)などで薬機法上問題のある広告を展開するケースが増加。SNS上でも薬機法違反の広告がたびたび指摘されている。D2C(Direct to Consumer)と呼ばれる小規模・新興の通販事業者が台頭した結果、その流れは加速していると業界関係者は言う。今年2月には、インフルエンサーとしても活躍する起業家・ハヤカワ五味氏が展開するスタートアップ・ILLUMINATEのサプリメントが薬機法に抵触していた可能性があったとして謝罪するに至った。だが、薬機法に臆することなく、過激な広告で商品をアピールする事業者は後を絶たない。

化粧品も課徴金の対象に

前述の業界関係者は、対面販売を主戦場にしていた大手化粧品メーカーの中にはセールストーク中に薬機法を違反する企業も存在する、だがそのような実態が黙認されてきた経緯があると説明。その上で、「(化粧品やサプリなどの)D2Cブランドの多くは大手化粧品メーカーの広告を参考にしている。薬機法違反をする大手化粧品メーカーが存在してきたため、そのような問題意識の希薄さまでもが受け継がれてしまっているのではないか」と話す。

課徴金はこのようなD2Cブランドにも課されるのか。厚労省の説明によると、医薬品や医療機器だけでなく、化粧品も課徴金の対象となる。例えば「塗れば即座に美白」といった化粧品の広告には課徴金が課されうるという。

厚労省いわく、健康食品であるサプリメントも課徴金の対象となりうるが、基本的には措置命令での処分を想定しているという。措置命令を受ければ、違反広告の中止や、再発防止策などの公示などを命じられるようになる。

とはいえ売上高の4.5パーセントという課徴金では、そもそも売上高の小さい小規模事業者にとっては抑止力にならない可能性もある。この点について厚労省の野原氏は、「(4.5パーセントという割合は)必要に応じて今後、見直していくこともありうる」と話す。

D2Cスタートアップには措置命令が「大きなインパクト」

D2Cブランドには、スタートアップが展開するものも少なくない。彼らにとって改正薬事法の影響はどれほどのものだろうか。スタートアップの事情に精通するGVA法律事務所では、課徴金や措置命令の導入によって、以前より薬機法関連の相談件数は増加すると見込む。

GVA法律事務所の宮田智昭弁護士は「売上高が課徴金の対象となる規模に達さないケースも多いかと思いますが、措置命令という行政処分が別途用意されています。スタートアップの業務、ビジネスにおいて大きなインパクトだと言えるでしょう」と話す。