ディープフェイクとは、狭義では、AIを使って動画の中の人の顔を別の人の顔に入れ替えたフェイク動画のことを言います。しかし、ディープフェイクという言葉が広まるにつれて、AIで生成された動画や画像、音声などのメディア全般のことを指すようになりました。

ディープフェイクという言葉にはどうしてもネガティブなイメージがつきまとうため、最近では「シンセティックメディア」や「合成メディア」などとも呼ぶようになってきました。

画像改変によるフェイクコンテンツは100年以上も前から問題になっていましたし、PhotoShopなどの画像編集ソフトの普及により、今までも多くの「フェイク画像」が生み出されてきました。一方で、「フェイク動画」の作成は近年までは難易度が高いものでした。

しかし、ディープラーニングの技術が発展し、フェイク動画が簡単に作れるようになったことで、ディープフェイクというムーブメントが起こりました。

──代表的なディープフェイクコンテンツとは。

ディープフェイクコンテンツの多くはポルノ動画です。2019年10月の時点でディープフェイクコンテンツの96%をポルノ動画が占めているというデータもあります。

一方で、精巧に作られた有名人や政治家のディープフェイク動画はたびたびSNS上で話題になり、技術の悪用への警鐘とともにメディアに多く取り上げられてきました。

2018年には映画監督のジョーダン・ピールと彼の映像制作会社が作成したバラク・オバマ元米国大統領のフェイク動画が話題になり、そのクオリティの高さから今でもディープフェイクの代表例としてメディアに取り上げられることが多いです。

最近では、トム・クルーズのフェイク動画がTikTokなどで拡散され、もはや本物かどうかまったく区別がつかないレベルにまで達していると話題になりました。

トム・クルーズの動画については、どうやって作ったかのネタばらし記事と動画も後日公開されて注目を集めました。

ディープフェイクの専門家と、トム・クルーズのモノマネの第一人者がタッグを組み、AIモデルの学習に2カ月、動画の撮影に数日をかけ、撮影後、それぞれの30秒ほどの動画の編集にも24時間ほどかかったといいます。

技術は年々進歩しているとは言え、本物と区別がつかないクオリティの動画を作るには、まだまだスキルと手間がかかるのが現状です。

──ディープフェイクはどのように有効活用されていますか。最近のトレンドや技術の進歩について教えて下さい。