だからこそ返品を必要以上に拒否するのではなく、「返品を起点に次の購買行動に繋げる」ための工夫に取り組む企業も増えてきている。

このような流れに伴い、存在感を増してきているのが「返品スタートアップ」だ。

たとえばECの雄・Shopifyは2018年に早々と返品業務支援サービスを手掛けるReturn Magicを買収。このサービスは現在もShopifyのアプリストア上で提供されており、多くの事業者が活用している。

同じように後払い決済サービスのAffirmが2021年4月にReturnly(約3億ドル)の、5月にはPayPalがHappy Returns(金額は非開示)の買収を発表した。ReturnlyとHappy Returnsは共に返品関連のプロダクトを展開する米国企業だ。

ここ数年で生まれたスタートアップに関してもLoop ReturnsやBlackCartなど1000万ドル以上の資金を調達するところが複数社出てきている。

日本に目を向けると、ロコンドを始めECを軸に事業を伸ばしてきたプレーヤーを中心に返品無料を打ち出す企業が徐々に増え始めている。海外企業の日本進出なども含めて、これから国内でもこの流れが広がる余地はあるだろう。

そんな少し先の未来を見越し、日本で返品体験のアップデートに取り組むのがRecustomer(リカスタマー)だ。2021年6月に返品・返金業務を自動化するSaaSのベータ版をローンチし、現在は複数のアパレル事業者にサービスを提供している。

同社では今後クーポンを通じた再購入の促進など、「返品を起点に既存顧客との関係性維持を支援する取り組み」を強化していく計画。そのための資金としてCoral Capital、ALL STAR SAAS FUND、G-STARTUP、Gazelle Capitalより1.5億円の資金調達も実施した。

アナログで改善余地の大きい返品業務を自動化

返品対応と一口に言っても、実際にユーザーから商品が返品された際に必要となる業務は想像以上に手間がかかる。ユーザーとのやりとりから始まり、注文商品の確認、返送と返金方法の確認、返送された商品の検品、倉庫とのやりとり、経理処理に至るまでやることは多い。

なおかつRecustomer代表取締役の柴田康弘氏によると、これらの情報は多くの場合スプレッドシートやエクセルで管理されている。メールを数回往復しながらユーザーとコミュニケーションを取り、1つ1つの情報をその都度エクセルに記録する──。