この一連のオペレーションの大部分を自動化できるのがRecustomerの大きな特徴だ。

同サービスを導入するECサイトにおいては、ユーザーは簡単な商品情報と「返品理由」や「使用状況」など事業者があらかじめ設定した項目の回答を入力するだけで、交換や返品の申請ができるようになる。

これらの返品情報は事業者用の管理画面に集約され、ユーザー情報や注文情報と紐付けられていくのでエクセルで逐一管理する必要はない。また管理画面上では返品・返金・キャンセルのポリシーを設定することが可能。そのルールに基づいて返品などの可否判断を自動で行い、さらには顧客へのメールも自動で返信できるため、業務の大幅な効率化に繋がる。

Recustomerの管理画面のイメージ
 

実際にRecustomerの導入企業では返品業務の8〜9割ほどを自動化できるようになっているそう。返品対応業務がスマートになることで、返金までのスピードも長くて10数日かかっていたところが最短で即日対応できるようになったケースもある。自動対応できる範囲であれば、日時を問わずスピーディーにユーザーの要望に応えられるようになる点もメリットだ。

ユーザーの視点でも、返品体験が改善されることは利便性の向上に繋がる。何度も担当者と連絡を取り合う手間とも無縁だ。

ユーザーもサイトから簡単な情報を入力するだけでスムーズに返品や返金の申請ができる
ユーザーもサイトから簡単な情報を入力するだけでスムーズに返品や返金の申請ができる

Shopifyの運用支援をきっかけに返品体験の課題を痛感

Recustomerは2017年に柴田氏が立ち上げたスタートアップだ。受託制作や自社プロダクトの開発などに取り組む中で、小売事業者向けにShopifyの構築支援や運用支援を手掛けるようになったことが1つの転機になった。

集客のサポートを通じて「既存顧客との関係性構築」にもっと力を入れていくべきだと考えた柴田氏は、一連のカスタマージャーニーを整理してテコ入れするべき工程を探った。そこで明らかにユーザーの不満が溜まっていそうだと感じたのが「返品や購入後の体験だった」という。

試しに米国の状況を調べてみると、返品に対する考え方や返品体験を支えるテクノロジーが日本よりも進んでいることがわかった。米国では2010年代に入って徐々にD2C企業などが増えていく中で、特に2014年〜2015年以降でさまざまな小売事業者が一気に返品ポリシーを緩め、パラダイムシフトが起きていたという。

もともと日本ではクーリングオフ制度が通信販売には適用されなかったことなどの事情から、多くの事業者が返品を積極的には認めない慣習が根付いていた。ただ、ここ数年でD2C関連のスタートアップや新ブランドが急増し、かつての米国の状況に近しい状況になりつつある。