海外企業の日本進出なども加速すれば、今後日本においても大きな変化が生まれるのではないかと柴田氏は考えた。

企業へのヒアリングで気づいた潜在的な返品ニーズ

もっとも、日本と米国では当然ながら返品に対する文化や制度も異なる。柴田氏自身も当初は「米国だからうまくいっているだけなのではないか」と半信半疑だったそうだ。

しかし実際に年商数億円規模のアパレルD2Cブランドにヒアリングをしてみると、思っていた以上にニーズがあることがわかった。

ブランドとしては毎月一定数の返品が発生していたため、その際の顧客体験を改善したいという考えを持っていた。一方で返品対応業務の負担が大きかったことから、業務効率化が急務でもあった。

同じように規模の異なるアパレルブランドや他の業種の企業にも話を聞きにいったが、返品に関する悩みや業務フローの大部分は共通していることがわかったという。

「ユーザーからの問い合わせの内、返品や交換関連がどのくらいの割合を占めるかを聞いてみると40〜50%のところが多かったんです。つまり仮に1000件あれば、500件は返品に関する問い合わせということになります。事業者側が断っているから結果的に返品率が低くなっているだけで、実はユーザー側の返品したいニーズはもっと大きいのではないか。日本でもこのマーケットは存在するはずだと考えました」(柴田氏)

この課題を解決できるプロダクトを開発しよう、そう決断した柴田氏は2020年の秋頃からプロダクト開発を進めた。

2021年3月に最低限の機能を実装したアルファ版を一部の企業に提供したところ、オペレーションの一部を担う“倉庫”側も巻き込まなければ課題が解決されないことに気づく。そこからは倉庫向けの管理システムも用意しつつ、サービスの機能拡充を進めた上で6月にベータ版のローンチにこぎ着けた。

Recustomerの料金はプランや返品数などによって異なるが、小売事業者はミニマムで月額5万円程度から利用することが可能。倉庫側は無料で使える仕組みになっている。

返品業務効率化だけでなく、売上拡大につなげるサービスへ

Recustomerでは返金を選んだユーザーに対してクーポンを発行することで再購入を後押しする機能も搭載
Recustomerでは返金を選んだユーザーに対してクーポンを発行することで再購入を後押しする機能も搭載

アパレル企業では返品管理や返品業務の効率化のニーズが特に強いため、Recustomerも現時点ではその効果を期待して使われているケースが多い。ただRecustomerを活用しながら返品ポリシーを変えることで、一部の導入企業では別の効果も現れてきている。

「ある種『返品の基準が緩くなった』ことで、同じような商品を複数パターン購入して試着のような感覚で使うような人も出てきました。結果として、最終的な注文単価自体が以前に比べて上がる事例も生まれ始めています」(柴田氏)