電子契約システム導入で未解決の課題は?
 

さらに、電子契約システムを導入済の職場で勤務する人のうち、92.0%が電子契約システム導入後も「紙の契約書締結を経験」と回答。自社の契約業務デジタル化を進めても、取引先との関係で紙契約書をゼロにするのが難しい現状が伺えた。

電子契約システム導入後も紙の契約書を締結したことは?
 

 このように「脱ハンコ」を実現しても、ハンコ前の業務(契約の交渉・確認などのコミュニケーション・契約書作成等)や、ハンコ後業務(契約書検索・閲覧等)、取引先の契約書デジタル化の遅れなどにより、多くのビジネスパーソンが、契約業務に対して課題感を抱いている。

世界では「契約の自動化」が焦点に

一方米国では、既にCLMサービスが多く登場し、契約にまつわるソリューションや研究開発も日本より先行している。米国でCLMサービスを提供している主な企業には、DocuSignやIcertis、Ironcladなどがある。DocuSignは時価総額545億ドル(約6兆1000億円)の上場企業。IcertisやIroncladもそれぞれ、28億ドル(約3100億円)、1.8億ドル(約200億円)と巨額の資金調達を実現し、ユニコーン企業となっている。こうした数値からも、CLMが米国では大きな市場となりつつある現状が伺える。

また、このように契約領域のテクノロジーが進化する中、米国でもスマートコントラクトへの関心が高まりつつある。DocuSignが2021年5月に買収したClauseという企業は、スマートアグリーメントのサービスを提供する企業だ(筆者注:Clauseによると、スマートアグリーメントは、アグリーメントに含まれるデータを利用してビジネスアクションを編成することを指す)。Clauseの定義を参考に整理すると、スマートコントラクトは下記の通り分類できる。

Clause(2020)「Smarter Legal Contracts Part 1: The What, How, and Why」を元にContractSが加筆
Clause(2020)「Smarter Legal Contracts Part 1: The What, How, and Why」を元にContractSが加筆

まず、伝統的な紙の契約がピラミッドの一番下の階層にあり、その次の階層として、契約の電子化、その次に、プログラムと一般言語を用いて法的に有効な合意形成を実現する、スマートリーガルコントラクト、そして頂点に、スマートコントラクトが位置付けられる。スマートコントラクトとは、設定されたルールに従って、ブロックチェーン上の取引、もしくはブロックチェーン外から取り込んだ情報をトリガーに実行されるプログラムを指す。

本記事では、この2番目のスマートリーガルコントラクトが実現するものを「契約(発生)の自動化」と捉え、それによって私たちの生活やビジネスが、どのように変化するか見ていく。