契約の自動化が“不可能だったビジネス”を可能にする

社会には、権利発生(=契約発生)や権利実現(=契約履行)にかかる、時間的、人的、金銭的コストなどが原因で、実現できていないビジネスがたくさんある。簡単かつ低コストで契約の自動化を実現できれば、今まで不可能だと思われていたビジネスが可能となるだろう。例えば、企業と個人が契約を締結し、契約条件を満たした納品がなされたときに、それをトリガーとして、自動的に支払いを行うような仕組みを構築することができれば、よりスムーズな取引が可能となる。

企業対企業/個人の間では、代金が支払われなかったり、購入した物が届かなかったり、サービスが受けられなかったり、といった取引上のトラブルは多く存在する。また、予定より遅延したり、そもそも実現までのスピードが遅かったりするケースも多々ある。

個人対個人の取引においても、個人所有の物を売ったけれど、代金を支払ってもらえない、知人に貸したお金が返ってこないなど、さまざまな問題が発生している。

このように、取引を巡る問題は、私たちの生活に身近な所でも多く発生しており、契約自動化の仕組みを活用することで、こうした問題を未然に防ぐことが可能となる。

不動産売買や貨物の取引もスムーズに(BtoB領域)

では具体的にどのように取引が変わるのか。まずはビジネスの領域から見ていこう。例えば不動産取引の場合。一般的な流れだと、不動産の売買契約時には、司法書士が同席して、さまざまな書類に押印し、登記の手続きを行った上で、物件の引き渡しが必要だ。マイホームを購入するときに、多数の書類に押印をした記憶のある方もいるのではないだろうか。契約の自動化が実現されれば、プログラム化した条件を満たすと自動的に不動産の登記や引き渡しを完了させられる、といったスムーズな不動産取引が可能となる。

また、運送業の領域でも契約の自動化は有効だ。定められた条件で荷物の運搬契約を結び、実現されたら自動的に対価が支払われる仕組みを構築すれば、納品から支払いまでがスピーディかつスムーズに実現できるようになるだろう。

例えば、「セ氏零下5度を保って明日の正午までに東京に荷物を運ぶと対価が支払われる」という条件を設定するとする。これをトラックの荷台に設置された温度計やGPS(全地球測位システム)など、IoTのセンサーと連携させる。そして、荷物が目的地に到着し、常に指定の温度を保っていたと確認できたら、自動的に代金が支払われるシステムが実現できれば、スムーズかつ迅速な対価の支払いが可能となる。