NFTの“流行”で広がるユースケース

Web3テクノロジーの中でも今、とりわけ大きく取り上げられているのが、NFTだ。その理由の一端には「レギュレーション(規制)の影響を受けにくいこともあるのではないか」というのが森川氏の見解だ。

インターネットが普及する以前は、情報の流通は出版社や放送局といった特定の企業がファンクションとして担っていた。それがインターネットの出現により、一般企業も個人も自ら情報発信できるようになり、発信コストは大きく下がった。これがティム・オライリーが2005年に「Web 2.0」という言葉で提唱した、情報が双方向で流通するインターネットの世界だ。

ただ、誰でも情報を届けられるようにはなったものの、従来型のインターネット空間においては、その情報の正しさをシステム的に担保することが技術的に難しい。そこでお金や不動産、証券のような情報は、Twitterでツイートをするような気軽さでは流通してこなかった。

「ところがビットコインの出現で、電子メールを送るようにお金を送れるようになった。インターネットによりウェブビジネスが急速に発達して産業が大きく変わったのと同じく、ブロックチェーンを基盤として金融がインターネットに内包されれば、産業がまた大きく変わるだろうという見立てが私にもありました」(森川氏)

だが、ビットコインをはじめとした「仮想通貨」(暗号資産)の出現は、「誰もがブログを書いて発信できる」というのと同じレベルで、「誰もが通貨をつくれる」ということを意味する。これは国家から見れば「困った状況」だ。暗号資産の取引には規制がかかり、その流通は抑制されるようになった。

暗号資産もNFTも、根本にあるのは同じブロックチェーン技術であり、ビジネスを変容する力がある、と森川氏は考えている。ただし、「ステークホルダーとして省庁や金融機関がかかわる暗号資産の世界に比べると、NFTが扱うデジタルコンテンツなどの資産の世界は、よりレギュレーションが緩やかで、発展の仕方が違ってくるのではないか」と見ている。

「YouTubeができたときに『みんながYouTuberになれる』『YouTuberになればお金が儲けられる』といった発想が広がっていったように、『NFTがあれば、不正できないデジタルデータをつくって、お金のやり取りができる』といった発想が広がり、一般にイメージできるようになった。それが今、NFTがはやっている理由なんだろうと思います」(森川氏)