ただし、「NFTや暗号資産などの領域においてブロックチェーンの活用が広がらないことで個人に投資機会が開けず、機会損失が続くという観点においては課題感がある」とも述べている。

産業界でのブロックチェーン活用に関しては、中国の動きにも注目しているという。

「インターネットではいわゆるGAFA(Google/Amazon/Facebook/Apple)に覇権を取られたことから、中国は『ブロックチェーンでは自分たちが主導権を握りたい』と思っています。そこで米国とは少し違った動きをしています。日本はインターネット産業では完全に(両者に)負けを喫している。ブロックチェーンについても、“ジャイアント”を輩出するためには非常に出遅れている状況ではないでしょうか」(森川氏)

そこでも「ペインが大きくないこと」が響いている。日本ではたとえばサプライチェーン業務など、toBでのブロックチェーン技術の活用については、ある程度検討が進んではいる。だが、国内流通では商社などが“がんばって”インフラを管理・維持しており、既存インフラをスイッチする方が面倒でコストもかかるため、なかなか普及には至らない。

「私がブロックチェーンに強い興味を持ったのは、ビットコインをフィリピンへ送金したときのこと。従来の国際送金では数百円から数千円かかる手数料が数円と、数十分の一、数百分の一になると知って、『これは面白いテクノロジーだ』と感じたのがきっかけです」

「十倍、百倍のメリットがなければ、人も企業も動かない。特にtoBの領域では、2倍ぐらいのメリットしかなければ、かえって切り替えのための投資が重荷になるので、そこから先には進まないんですよね。十倍、百倍のメリットが見えるようになるか、あるいは日本が相当取り残されて『そろそろ取り組まなければヤバい』となってからでなければ、動かないかもしれません」(森川氏)

森川氏は、その意味では個人による利用の方が、ブロックチェーン普及の起爆剤になると考えている。

「たとえばNFTでは、今までなら1円にもならないと思われていた絵が100万円で売れるとか、そういったことが起きやすいのではないかと思います。Web3やDeFiは海外でも、個人が主役だから盛り上がっているところがあります。NFTも暗号資産も億単位のお金が流れていて、いずれ頭打ちになるとしても、これまでの個人資産の規模から言えば大きな額が流れている。それが急拡大の理由でしょう」(森川氏)