わかりやすい例で言うと、「リアル店舗DX」の領域があります。エンドユーザーのデジタルUX(ユーザーエクスペリエンス)への要求の高まりは不可逆なため、大手から中小まで幅広いサービスが立ち上がりつつあります。生鮮スーパー市場では10X、delyがエンタープライズを相手に取り組んでいたり、ShopifyやSTORESがPOS(販売時点情報管理)を通じてデジタルとリアル店舗をつなごうとしたりしています。

違う例で言うとリアルなグラフ(つながり)を中心としたソーシャル活用型のEC体験が広がるチャンスとも思っています。海外ではSnackpassというリアルなソーシャルグラフを活用した飲食テイクアウトサービスが急成長していますが、日本でも近しいサービスにチャンスがあると思っています。カウシェも現在はリアルグラフ外のマッチングが多いと思いますが、普及に伴いリアルグラフに軸足が移っていくと思います。コロナ禍で普及したデジタル完結のEC体験に、リアルが絡む価値を取り入れる所にチャンスがあると思っています。

小川嶺氏 / タイミー代表取締役 

  • 2021年の振り返り

あらゆる業界でDXが盛り上がった年だったと感じています。リモートワークやオンライン会議が当たり前となり、比較的これまでDXが進んでこなかった飲食業界や物流業界、小売業界でもウェブ会議システムを店長会議等で導入するようになりました。

これによってITに対する理解が各業界で進み、効率化できるものは何かを考える視点が当事者として芽生えた年だったのではないでしょうか。結果として、タイミー事業自体にも大きな追い風になりました。これまでは、アプリだけで人を呼ぶという発想自体が中々受け入れられてきませんでした。大きな業態の企業であればなおさらです。

しかし、このコロナ禍・緊急事態宣言解除後という特殊な状況の中で、ボタン1つで人を呼ぶという発想の受け入れが半強制的に成し遂げられたのではないかと推測しています。こうしたITへの理解が、人材領域でのDXに結びついた一因であると考えます。

  • 2022年のトレンド予測

個人的に興味があり期待しているのは、メタバースの領域です。Facebookが社名をMetaに変更しましたが、この流れはウィズ・アフターコロナの世界で加速すると考えています。

ここまでオンライン会議やテレワークが浸透した現在においては、リアル(オフライン)だけで完結する世界に戻るとは考えづらく、今後はリアルとオンラインのハイブリッドになると考えています。そうした中、リアルでは「自分が自分である意味・必要性」という承認欲求を満たしにくくなっていくと推測します。メタバースは仮想空間に自分(パーソナリティ)を作ることができる新しい概念です。社会的承認欲求を得にくい社会において、今後求められる機能を担っていくのではないかと思っています。