家族信託の仕組み
家族信託の仕組み 画像提供 : ファミトラ

ファミトラではこの家族信託にまつわるプロセスを徹底的に効率化することに取り組んできた。

家族信託は守備範囲が広くさまざまなことができてしまうため、あらゆる視点を考慮した“100点満点の契約書”を作ろうと思うと膨大な時間がかかる。そこでファミトラでは対象を認知症対策に特化し、信託契約書作成の論点を絞りこむことで“型化”した。

それによって契約書の作成を半自動化し、作業の時間や手間を大幅に削減。論点の洗い出しや契約内容の説明にかかっていたコストも圧縮することで、利用料金自体を抑えた。

ユーザーとのやりとりそのものは家族信託コーディネーターの資格を持つファミトラの担当者が電話やLINEなどで行うが、裏側ではITの活用が進む。

担当者が家族構成や資産情報といったユーザーからヒアリングした情報を入力すると、その状況に合った見積書や信託契約書を半自動で生成する社内システムを整備。LINEの公式アカウントと併用できる独自の顧客対応システムも内製するなど、オペレーションの改善に力を入れてきた。

家族信託の組成にあたっては家族構成や家庭の事情などそれぞれのケースでいくつもの項目を検討する必要があるため、何度も専門家が家族会議に運び、コミュニケーションを重ねながら進めるのが一般的だったという。そのため資産規模によっては100万円を超える高額な費用がかかるケースもあり、利用するのは一部の富裕層などに限られてきた。

一方のファミトラは5万4780円(税込)からの初期費用と、3万2780円(税込)からの年間費用がサービスの基本料金(信託財産評価額が1億円未満の場合)。ここに弁護士による契約書作成費用などの実費が加わるかたちにはなるが、従来よりも価格を抑え、スムーズに使える設計にすることで「家族信託をコモディティ化」するのが狙いだ。

冒頭で触れたようにこの1年でも利用者を増やしており、顧客の信託財産総額は2020年12月と比較して7倍強に拡大。現在のペースで推移すると2021年度中には100億円に達する見込みだという。

ファミトラ代表取締役CEOの三橋克仁氏
ファミトラ代表取締役CEOの三橋克仁氏

ファミトラ共同創業者の三橋克仁氏(代表取締役CEO)や早川裕太氏(取締役CTO)によると、この1年で論点の整理と体系化がさらに進み、対応のスピードも上がってきたことがサービス成長の要因の1つだ。並行して銀行、保険、証券、介護、医療、不動産、葬儀、税理士などなどさまざまな事業者との連携も進めており、サービス間での相互送客のようなライトなものも含めると約200の事業者と取り組みを始めている。