最初に見直す
必要がある「医療保険」

POINT2 医療保険は最低限に

 マネー本100冊の中には、「医療保険の見直し」をすすめる意見が目立ちました。医療保険を見直すべき理由は、「高額療養費制度を利用すれば、治療費の自己負担額を抑えられる」「貯金でまかなうほうがお金の負担が少ないこともある」からです。

●高額療養費制度……医療機関や薬局の窓口で支払った額が、ひと月(月の初めから終わりまで)で一定の上限額を超えた場合に、超過した分のお金が払い戻される制度のこと。

 日本の健康保険制度は、長期入院や高額医療で治療費がかさんでも、患者の自己負担額を一定額に抑えられるしくみです。

 たとえば、「70歳未満で、年収約370万~約770万円」であれば、1カ月の医療費(自己負担額)の上限額は約8万円程度です(約8万円を超えた分が戻ってきます)。自己負担額は年齢と所得によって異なります。高額療養費制度では、入院中の食事代、差額ベッド代、先進医療にかかる費用をカバーできませんが、それでも多くの著者が「医療保険の必要性は低い」と考えていました。

「筆者は、これらの費用に民間の保険で備える必要はないと考えています。
 そもそも健康保険や高額療養費制度があることで、医療費はそれほどかからないのですから、食事代や差額ベッド代については、できるだけ貯蓄でまかなうようにすべきでしょう。
 また、先進医療が必要になる確率は非常に低いものです」
(頼藤太希『定年後ずっと困らないお金の話』/大和書房)

 この他にも、医療保険の加入については、
「医療保険に加入せず、保険料分を貯蓄に回したほうが何にでも使えるお金が残って得」
「貯蓄が十分にあるなら、掛け捨ての医療保険はもったいない」
 といった意見がありました。

 厚生労働省が発表した令和2年度の生涯医療費は、2695万円でした(70歳未満は1331万円、70歳以上は1364万円)。自己負担するのは、そのうちの1~3割です(割合は年齢や所得に応じて決まる)。生涯医療費の約半分は70歳以降にかかっています。

 民間の医療保険は、公的保障の不足を補うものです。まずは自分がどれくらいの公的保障を受けられるのかを確認し、その上で、「公的保障と現在の貯蓄だけでは病気やケガによるお金の不安を解消できない」のであれば、医療保険で対応します。