2025年に開催予定の大阪・関西万博。その費用は雪だるま式に膨張しており、批判の声が上がっている。万博のような大型イベントの誘致を試みる都市は、地域経済に好影響を与えたい思惑があるが、ハーバードビジネススクールのマックス・H・ベイザーマン教授はそうした主張に懐疑的だ。なぜ、効率的ではない税金の使い方をしてしまうのか。われわれ市民が注視すべき点とは。(聞き手/作家・コンサルタント 佐藤智恵)
アマゾンの第2本社誘致は
「税金の無駄遣い」だった
佐藤智恵(以下、佐藤) 日本では2025年に大阪・関西万博が開催される予定ですが、国民からは膨張が続く万博コストに対する批判が高まっています。ベイザーマン教授の著書『BETTER, NOT PERFECT すこしでも確実に社会に役立つ選択をする』では、国や地方公共団体による「税金の無駄遣い」を厳しく指摘し、その一例として、アマゾンの第2本社建設地をめぐる誘致合戦を取り上げています。なぜ、この事例を紹介したのでしょうか。
マックス・ベイザーマン(以下、ベイザーマン) 私が本書で伝えたかったのは、「国や地方公共団体は、社会に役立つことを実現するために効率的に税金を使うべきだ」という点です。アマゾンが第2本社の建設地を大規模な公募で選んだことは、逆に多くの地方都市の税金を無駄遣いしてしまった事例だと思いました。
2017年9月、アマゾンは第2本社を北米の都市に建設する計画を発表し、その建設地をコンペで決めることを公表しました。その結果、238もの都市が名乗りを上げ、誘致合戦が繰り広げられました。地方公共団体が公募に参加するには多額の税金がかかります。応募書類を作成するために、デザイナーやエンジニア、コンサルタントなどを雇い、数百万ドルを費やすことも珍しくありません。
ところが現実的に考えて、この238都市の中で本当に誘致できる可能性のあった都市はどれだけあったか。結果を見れば、ほとんどの地方都市には可能性がなかったのは明らかです。