ビッグモーターの保険金不正請求問題では、取引先の損害保険ジャパンについても責任が問われている。ESG経営の先進企業として知られていた同社は、なぜ不祥事を起こしてしまったのか。また、企業の不祥事は、社員一人一人のキャリアにも大きな損失を与え得るのだという。どのような影響が出るのか。ESG経営研究の世界的権威である、ハーバードビジネススクール教授のジョージ・セラフェイム氏に聞いた。(聞き手/作家・コンサルタント 佐藤智恵)
世界中の企業で
不祥事が増えている根本要因とは
佐藤智恵(以下、佐藤) 日本では「ビッグモーターによる保険金不正請求問題」や「ジャニー喜多川氏による性加害問題」など、企業不祥事が連日、大きく報道されています。現在、日本だけではなく、アメリカ、ヨーロッパ、中国などでも企業不祥事が増えている印象がありますが、その要因は何でしょうか。
ジョージ・セラフェイム(以下、セラフェイム) それは興味深い指摘だと思います。私たち人間は、過去の失敗や過ちから学び、不祥事を二度と起こさぬよう企業の監視・統制システムを確実に強化してきたはずなのに、なぜ不祥事が増えているのか。
その主因は、テクノロジーの進化によって世界中で情報の透明化が進んだことにあります。昔から不祥事はたくさん発生していたのですが、不祥事が社員によって発見される確率や、マスメディアに知られる確率が極めて低かったため、表に出る数が少なかったのです。