「お金」大全 #12Photo:PIXTA

投資で後悔しないためには、短期の値動きを気にしないこと。右往左往するのが落ちだ。個人投資家は「分散」「長期」というプロに負けない投資の武器を持つ。特集『「お金」大全』(全17回)の#12では、その本当のパワーを理解し、きちんと使いこなすためのポイントを解説する。投資にはどっしり構えて臨もう。(ダイヤモンド編集部論説委員 小栗正嗣)

誤解されがちな「時間分散」
ドル・コスト平均法には注意

 投資のリターンとは、投資によって得られる収益。投資のリスクとは、そのリターンの振れ幅の大きさ、不確実の度合いのことである。高いリターンを得ようとすると、リスクも高まる。リスクを低く抑え込もうとすると、リターンも低下してしまう。

 投資の勝負どころは、期待されるリターンを犠牲にすることなく、リスクをいかに抑え込めるかなのである。そこで力を発揮するのが「分散」だ。個人投資家でも使いこなすことができる強力な武器である。

 この分散には、投資のタイミングを分散させる「時間分散」と、値動きの異なるさまざまな投資対象に分散させる「資産分散」がある。投資の“いつ”と“どこに”の分散だ。

 まずは投資の“いつ”の時間分散である。一度にまとめて売買するのではなく、時期を分けて売買することだ。定期的に一定額を投資する積み立て投資は、それに当たる。

 この時間分散には結構、誤解が多い。「ドル・コスト平均法」もしかりだ。

 これは、定期的に一定金額を投資すること。投資額を一定とすることによって、価格が低いときには購入量(口数)が多くなり、価格が高いときには購入量(口数)が少なくなる。平均購入単価を下げるのが可能なわけだ。為替の世界からきた考え方である。

 しかし、このドル・コスト平均法は、為替のように期待リターンがゼロのものを買うときに通用する話だ。株式投資のように、そもそも期待リターンがプラスのものに投資する場合には、話が違ってくる。将来的に上がることが見込めるのであれば、最初に元本の全部を注ぎ込んだ方が資産は大きくなる。

「時間分散は“最大利益を狙うものではない”と明確にする必要がある。あくまでショックを和らげるものであると心得るべきだ」(小松原宰明・イボットソン・アソシエイツ・ジャパン チーフ・インベストメント・オフィサー)

 大金を投じてから市場が崩れ、ドンと損を食らうよりも、小分けで投資していた方がショックは小さい。投資というのは、長期にわたってマーケットの中に居続けることこそが大切だ。ショックを和らげる意味は大きい。

 下図は、内外株式、外国債券など主な資産の50年超にわたる推移である。単年度では値上がり、値下がりを繰り返している。特に内外の株式の動きは激しい。リーマンショックのときなどは日本株でマイナス40%、外国株はマイナス50%に達していた。しかしながら、長期的には上昇してきたことが確認できる。

 次ページ以降、個人投資家に与えられた「分散」「長期」という武器の効用と活用ノウハウについて、さらに見ていこう。