不動産価格や教育費の高騰など、現役世代を取り巻く環境は厳しく、業績変動の激しい企業に投資をする勇気はない――。そんな個人投資家に注目してほしいのが、景気変動に強く、業績が右肩上がりの高配当株だ。特集『最新決算反映! 円安、インフレ、金利上昇に負けない 強い株ランキング』(全6回)の#1では、九つの条件をクリアした、中長期で「増配」と「株価上昇」の両取りが狙える精鋭候補をピックアップした。(ダイヤモンド編集部 篭島裕亮)
短期も長期も右肩上がりで
株主還元意欲が強い企業に照準
個人投資家に人気の高配当株。アベノミクス以降、コーポレートガバナンス(企業統治)改革を推進した結果、日本の上場企業の配当額は年々増加している。2023年3月期も過去最高を更新する見込みとなっており、配当狙いの投資には追い風が吹いている。
ただし、注意したいのは単に「高利回り」だけに着目して高配当株を選んではいけないこと。「高配当株は下値が堅い」と説明されることも多いが、業績低迷が続けば「減配」を余儀なくされ、株価も大きく下落するリスクがあるからだ。
とはいえ、ビジネスモデルを分析して、将来の業績を予想することは機関投資家でも難しい。そこで参考になるのが過去の業績推移である。データ分析に詳しいクォンツ・リサーチの西村公佑社長に下値が堅い高配当株の選び方についてアドバイスをもらった。
スクリーニング条件は下記の九つ。
1 直近5期の増収回数が3回以上
2 直近5期の増益回数が3回以上
3 直近四半期の売上高および経常利益が前年同期比でプラス
4 今期の四半期累計の売上高および経常利益が前年同期比でプラス
5 直近の四半期決算で業績予想を下方修正した企業を除く
6 今期の売上高経常利益率が6%以上
7 自己資本比率が25%以上
8 時価総額が250億円以上
9 直近10期の増配回数と減配回数の差が4回以上
「スクリーニングのポイントは業績が中期、短期共に右肩下がりでないこと。また景気変動の影響を受けにくく、株主還元に積極的なことも重視した」(西村氏)
それぞれ説明していこう。
1、2の「増収、増益の回数」は減益基調の会社を除外するため。コスト削減だけでは中長期での成長は難しいため、売上高の増加も条件に加えている。
3~5の「四半期業績」は足元の業績が鈍化していないかをチェックするためだ。一喜一憂する必要はないが、いち早く「異変」に気が付くためにも四半期業績も確認しよう。
6の「売上高経常利益率」は売上高に対する経常利益の割合。高いほど収益性が高く、不況時に赤字になりにくい。また同業界で比較する場合、「利益率は競争力の高い企業を選別する際の判断材料になる」(西村氏)。
7の「自己資本比率」は財務面での安定性、8の「時価総額」は企業の安定度と売買のしやすさを高める意図がある。
9の「直近10期の増配回数と減配回数の差」は好不調が激しい企業を除外するためだ。また、増益基調のときにきちんと株主に還元しているかも確認しよう。増配実績のある企業は、利益拡大が続く限り、今後も配当を増額する可能性が高い。
最新の四半期決算で、9条件のスクリーニングをクリアした精鋭候補が次ページの70銘柄だ。驚くことに単に配当利回りが高い上位30社からの選出は2社のみとなった。逆にいうと、高配当株の多くは前述の条件のいずれか(もしくは複数)を満たさず危うさを秘めている。
ランキングは配当利回りが高い順に並べた。ネット証券などのスクリーニングでは難しい項目も多いので、ぜひチェックしてほしい。
厳しい条件を付けたが、配当利回り4%超の企業も23社登場する。最新の四半期の業績も堅調なので、今後の増配や株価上昇も期待できる。「中長期保有向け」の企業がそろうので、投資初心者にも参考になるはずだ。